イメージ(Adobe Stock)

企業にとって、リスクは、リターンの源泉であり、戦略的方針に従って積極的にテイクすべき対象といえる。誰にも将来の具体的なシナリオを正確に予測することができない。そのため、企業価値を向上させるためには、具体的で明確な戦略の策定と遂行、その遂行の過程で発生する不確実性に起因する価値の変動(=リスク)に対して的確に対応していかなければならない。この意味で、企業にとって、戦略推進とリスク管理は表裏の関係にある経営管理機能と位置付けられている。

個々の企業が社内に効果的なリスク管理体系(Enterprise Risk Management: ERM)を構築しようとすれば、体制面と態勢面の両面から検討する必要がある。つまり、経営管理としてリスク管理機能をどのように組み入れていくべきかその構造を検討し、その構築において、どのような要素を考慮すべきであるか、といったように機能面からその体制をデザインしなければならない。その上で、構築した体制の有機的な機能向上に努力する必要がある。つまり、リスク管理が企業内で実行性を持つためには、企業の具体的な戦略やビジネスモデルに適応して効果を発揮するための態勢強化を図っていかなければならない。このように、ERM構築においては、構造的・原則的な側面からの帰納的なアプローチと、実務的、実践的な側面からの演繹的アプローチの両面を必要とする。