2019/08/02
災害時に困るトイレの話
3. トイレが感染症の温床となる
2つ目は、集団での感染症です。不特定多数の人が集まる場は、感染症のリスクが高まります。特に避難所などでの密集生活では集団感染が起こりやすくなります。災害時は、十分な栄養摂取や睡眠ができないため、免疫力が下がっていますし、掃除や手指衛生も徹底できません。このような状況下で、不衛生なトイレを共用することは集団感染につながります。

東日本大震災の避難所で聞いた話を紹介します。この避難所では、断水時、取っ手付きの大きなプラスチックボトルをトイレに置いておき、それを使ってトイレに水を流すようにしていました。バケツで流すより使いやすいからそのようにしたそうです。しかしこれが原因で、感染性の胃腸炎が広がったとのことです。排泄物が手を介して取っ手に付着し、それが使う人の手を汚染したことが考えられます。すぐに取っ手付きのプラスチックボトルの使用は禁止になったとのことです。
トイレは例外なく全員が使います。だからこそ皆で協力して衛生を保つ必要があります。
以上、トイレ問題が引き起こす深刻な事態についてまとめてみました。
繰り返しになりますが、トイレ問題は命にかかわります。言い換えるとトイレ対策は関連死対策ということもできます。
企業には、従業員や来場者などの安全確保が求められます。そして、安全確保の次は助かった命を継続するための健康確保が必要です。そのためには、トイレ対策が欠かせないということがご理解いただけたかと思います。
まとめ
□トイレ問題は「一人ひとりの健康被害」と「集団での感染症」につながる
□トイレに行くのが嫌だと感じてしまうと、水分摂取を控えてしまう
□水分摂取を控えることで、体調を崩し死に至ることもある
□トイレ対策は従業員と来場者を守るためには不可欠である
(了)
災害時に困るトイレの話の他の記事
- 第5回 災害時、携帯トイレは役立つのか?
- 第4回 避難所におけるトイレの備えの実態
- 第3回 浸水時のトイレ対応
- 第2回 トイレ問題は命にかかわります
- 第1回 災害時に水洗トイレは使えなくなる?
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方