(写真:日本トイレ研究所)

最近の台風や豪雨などで「これまでに経験したことのない…」というフレーズを耳にしますが、そんな言葉にも慣れつつあることに恐ろしさを感じています。これまで書いてきたとおり、水洗トイレは災害に強くないシステムです。地震で給水設備が壊れてしまえば断水し、停電だとしてもポンプが動かなければ給水されません。また、水を確保できたとしても、排水系統に支障があれば流すことはできません。浸水時は、地中の排水管も満水なので、汚水を流すことはできなくなります。つまり、どのような自然災害においても、災害用トイレの備えが必要ということです。これは、家族を守る、従業員を守る、地域住民を守る上で欠かせません。しかし、水や食料に比べて、トイレの備えは圧倒的に不足しています。そこで、今回は、避難所でのトイレの備えの現状について考えてみます。

避難所におけるトイレの備えはどうなってる?

災害時の拠点といえば「避難所」で、そのほとんどが公立学校です。文部科学省は、全国の公立学校の設置者を対象に災害時の備えに関する調査(平成31年4月1日現在)を実施しました。全国の公立学校は、3万3285校ありますが、このうち3万349校(91.2%)が指定避難所です。この指定避難所のうち、断水時のトイレの備えをしているのは、1万7707校(58.3%)でした(下表参照)。

断水時のトイレの備えという表現が少し分かりにくいですね。ここでは、「マンホールトイレや、プールの水や雨水を洗浄水として使用できるトイレ(配管の工夫等により使用できる場合を対象とし、バケツリレーで使用する場合は除く)、携帯トイレ等を確保している学校のほか、民間事業者等との協定等により仮設トイレ等を優先的に利用できる学校を含む」と説明されています。

ざっくりいえば、「携帯トイレ」「簡易トイレ」「マンホールトイレ」「仮設トイレ」など、何らかの備えをしている、という意味だと思います。数量的に十分という意味ではないので注意が必要です。

例えば、災害時の初動対応は、屋内トイレとしてすぐに準備ができる「携帯トイレや簡易トイレなど」が必要になりますが、その備えは41.3%です。言い方を変えると、半分以上の避難所には全く無いということになります。発災から6時間以内に7割以上の人がトイレに行きたくなる、というデータもあります。そう考えると、劣悪なトイレ環境になってしまうことが予想できます。

備えが進んでいる都道府県としては、1位 鳥取県(100%)、2位 神奈川県(98.3%)、3位 東京都(95.9%)です。一方で、備えが進んでいないのは、47位 秋田県(4.3%)、46位 島根県(12.7%)、45位 山口県(12.8%)です。都道府県別のデータが公開されていますので、ぜひご自身の地域を調べてみてください。

写真を拡大 出典:避難所となる公立学校施設の防災機能に関する調査の結果(断水時のトイレ部分を抜粋) http://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/bousai/__icsFiles/afieldfile/2019/08/29/1420466_001_1.pdf