(写真:NPO法人日本トイレ研究所)

1. トイレ問題が引き起こす2つの深刻な事態

前回の記事では、「水洗トイレはシステムであること」「トイレは、備えや支援から抜け落ちやすいこと」「排泄は待ったなしであること」を書きました。

簡単にまとめると、大きな地震や水害のときは水洗トイレが使えなくなります。ですが、発災後6時間以内に約7割の人がトイレに行きます。トイレの備えがなければ、トイレが大小便で一杯になり劣悪な衛生状態となります、という内容でした。
■第1回 災害時に水洗トイレは使えなくなる?

もちろん劣悪なトイレは超不快なので、それだけでも問題なのですが、そこが問題の本質ではありません。先に結論を言うと、トイレ問題は命にかかわります。トイレ問題が引き起こす2つの深刻な事態とは「一人一人の健康被害」と「集団での感染症」です。いずれも関連死につながる重大な課題として認識すべきです。

では、1つずつ解説します。

2. トイレ問題が起因となる一人一人の健康被害とは?

1つ目は「一人一人の健康被害」です。

排泄は、自律神経の中でも副交感神経が担っています。副交感神経はリラックス状態のときに優位になる神経です。つまり、排泄には安心できるようなトイレ環境が必要ということです。

ですが、被災者の方々に災害時のトイレのことを聞いてみると「真っ暗で怖い」「寒くて(暑くて)外のトイレに行きたくない」「ものすごく混んでいる」「男女分けされていない」「和式トイレなのでしゃがめない」などの困りごとが挙げられます。

人によってトイレが使いづらいと感じる内容は異なりますが、1つでもトイレに行きたくない理由ができてしまうと、できるだけトイレに行かなくて済むように、水分摂取を控えてしまいます。ただでさえ極度のストレスで弱っている中、水分摂取を制限してしまうと、どうなるか分かりますか?

血圧上昇、体温低下、脱水などで体調を崩してしまいます。それが引き金となり、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓、誤嚥性肺炎などで死に至ることもあります。
つまり、トイレが原因で命を落としてしまうのです。

だからこそ、災害時にも安心して使えるトイレが必要です。

写真を拡大 出典:避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン/内閣府(防災担当)