2016/08/08
事例から学ぶ

トヨタ自動車では、4月14日夜の前震以降、国内における完成車の組み立てラインの稼働を段階的に停止。4月18日から23日にかけ、トヨタ自動車九州の2ラインを止めたのを皮切りに一時は本体ほぼすべての生産ラインを休止した。
原因となったのは、アイシン精機の子会社アイシン九州(従業員610人、売上高229億円)の被災だった。1993年にアイシングループの中核拠点として発足。ドアやサンルーフ、パワーシート、エンジン部品を主に生産している。このうち、ドアの開閉を制御する「ドアチェック」という部品が今回の地震で生産できなくなった。ドア開閉時の節度と開度を一定に保持するための製品で、開閉時にレバー部を樹脂部品とゴム部品で保持するシュータイプと、鋼材でできたローラーとスプリングで保持するローラータイプと大きく分けて2種類あり、車両・グレードなどにより使い分けている。1カ月の生産量は約90万本で国内シェア1位を誇る。
1万3000 社をデータベース化
一方のトヨタ自動車では、2011年3月11日の東日本大震災で車載マイコンなどをつくる仕入先が被災したことなどにより、生産の再開まで約5週間を要したことから、部品などの仕入先を最大限把握できるようデータベース化を進めてきた。
その数は正式発表されていないが、日経新聞2015年3月9日付朝刊では、「約4000品目の部品について、関係のある1次や2次だけでなく、トヨタ本体はほとんど情報を持っていなかった10次以降までの取引先の協力を得て生産場所や緊急連絡先をデータベース化した。対象は約1万3000社、約3万拠点に及ぶ」と報じている。
今回の地震は対策が十分至っていないサプライヤーの弱点を突く形で発生した。
「まだ対策は道半ば」
「直接の仕入先のみならず、2次仕入先以降も含めサプライチェーンがどうなっているか、例えば1拠点だけで作っている品目はないか、仕様が特殊だったり工程や材料が特殊だったりすることで代替が難しかったりする製品はないかという調査はずっと進めてきています。特定できた品目から調達拠点を分散してもらうとか、生産拠点で災害が起きたときの被害を軽減するなど徐々に対策も実行してもらっています。仕入先各社においてもBCPの策定・改善は進めてもらっていると聞いています。しかし、車1台あたりの部品が3万点ぐらいから構成されていることもあり、まだ対策は道半ばと言わざるを得ません。優先順位の高いものから取り組ませてもらっていますが、どうしても対策に時間がかかってしまうものもあります。今回の地震は道半ばの中で発生してしまいました」(同社広報担当者)。
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