阪急阪神ホールディングスのコア事業と中核企業5社の位置づけ

阪急阪神ホールディングス(大阪府大阪市、嶋田泰夫代表取締役社長)は2024年4月1日、リスクマネジメント推進室を設置した。関西を中心に都市交通、不動産、エンタテインメント、情報・通信、旅行、国際輸送の6つのコア事業を展開する同社のグループ企業は100社以上。コーポレートガバナンス強化の流れを受け、責任を持ってステークホルダーに応えるため、グループ横断的なリスクマネジメントを目指している。

ポイント
①リスクオーナーの任命でガバナンス強化
・グループ横断的な重要リスクのリスクオーナは、室長や部長クラスが務め、責任を明確にする。

②ホールディングス主導で強化テーマを設定
・グループ各社に強化テーマのリスクについて、具体的な改善計画の立案を促し、確実に取り組む。進展度合いによっては複数年にまたがって進める。

③グループ各社からアクシデントなどを収集し、改善に活用
・各社で参考にできるようにグループ内で発生したアクシデントやインシデントを「現実化事例」として整理し、経営層も含めて情報を共有。

リスクマネジメント推進室の新設

2024年4月1日、阪急阪神ホールディングス(阪急阪神HD)はグループ全体のリスク管理の統括機能を強化するため、社長直轄のリスクマネジメント推進室を設置した。その理由を、同社リスクマネジメント推進室リスクマネジメント推進部長の石垣太氏は「コーポレートガバナンス強化の一環です」と説明する。

同社では、阪急ホールディングスと阪神電気鉄道が統合した直後の2007年からリスクマネジメント活動を続けている。総務部が担当していたリスク管理を、専任部署を設けて対応する検討を開始したのは2021年頃からだという。背景にあったのは金融庁と東京証券取引所が進めていたコーポレートガバナンスの改訂だった。

グループ全体のリスク管理強化を目的とした取り組みは、社長直轄のリスクマネジメント推進室を設置するだけではなかった。グループ横断的に取り組む重要リスクには、それぞれ担当する部門長などをリスクオーナーとして任命し、責任を明確化した。

推進室は2.5線のイメージ

石垣氏が「ここが特徴的」と力説するのがこのリスクオーナー制の導入だ。これは責任と権限の明確化でリスクマネジメントを強化する⼿法。グループ横断的なリスクマネジメントは阪急阪神HDが担当し、対応するリスクそれぞれに責任者となるリスクオーナーを定める。

2023年度のリスク管理委員会で決定した7つの重要リスクそれぞれに、リスクオーナーとして任命されたのは、「自然災害」「法令違反」リスクは総務部長、「労務」リスクは人事部長、「情報セキュリティ」リスクは情報セキュリティ推進部長、「広報」リスクは広報部長、「ビジネスと人権」リスクはサステナビリティ推進部長、「財務」リスクはグループ経営企画室長だった。

グループ全体における推進室の役割を、リスクマネジメント推進部課長の若狭智也氏は「3線モデルの2.5線のイメージです」と説明する。3 線モデルとは、2020年7月にIAA(内部監査人協会)が公表したリスクマネジメント方法。主に、事業や業務部門を第1線、リスク管理やコンプライアンス担当部門を第2線、内部統制部門を第3線として、互いの役割分担を明確化し、リスクマネジメントを強化する方法だ。

推進室が「2.5線」というのは、ホールディングスとして各中核会社の2線機能だけでなく、中核会社全体のリスクマネジメント活動に関する確認やチェックといった役割も担っているためだ。