2019/11/25
医師が語る感染症への知識のワクチン
II.帯状疱疹
水痘に罹患した後、水痘帯状疱疹ウイルスは一生涯遺伝子の形で知覚神経節に潜伏し、加齢や種々のストレス、免疫力が低下した時などに体内で再活性化を起こし、潜伏感染している神経節から神経束を傷害しながら前駆痛を伴って下降し、身体の片側の皮膚の文節知覚帯に帯状の疱疹を生じます。1年間に約60万人の発症があるといわれ、80歳までに3人に1人が帯状疱疹を経験すると推定されています。また、最近特に免疫力の低下がないと思われる比較的若年者にも帯状疱疹が発症することが、以前より多くなっているともいわれています。
1. 帯状疱疹病の特徴
症状
発疹は体幹部、頭頚部に多く、神経の走行に沿って身体の片側のみにみられることが大きな特徴です。初期は皮膚がぴりぴりするような痛みがあり、1週間程度すると赤みや水疱などの皮膚症状が片側の神経に沿って帯状に現れます。皮疹は疼痛を伴いますが、痛みは個人差があり、軽い場合から夜眠れないほどの痛みになることもあります。顔面に生じた場合、角膜炎や結膜炎をおこしたり、顔面神経まひや難聴などを伴うこともあります。2〜3週間で皮疹は治りますが、その後も痛みだけが続くことがあります。皮膚症状が治まった後も長期間にわたって痛みが残るものを、帯状疱疹後神経痛といっています。
感染経路、感染力
帯状疱疹は、元々自分の体内に潜伏しているウイルスが再活性化して起こる病気で、新たに感染して症状が起こる病気ではありません。帯状疱疹は水痘よりは感染力が低いですが、発疹出現3日前からだ液中にウイルスが排せつされるため、水痘に未感染の人では空気感染や帯状疱疹患者の皮疹に接することで水痘にかかることがあります。皮疹は感染防止のためにカバーすることが原則となっています。帯状疱疹患者の免疫不全の有無によって、また全身性に拡大するいわゆる播種性かどうかで、他者への感染力は異なります。
2.予防
帯状疱疹の予防は水痘ワクチン接種が有効です。このワクチンは水痘ワクチンと同じものです。予防接種は帯状疱疹を完全に抑えるものではありませんが、発症しても軽症で経過するといわれています。ただし、対象は50歳以上とされています。
3.感染した場合の対策・治療
帯状疱疹に罹患した場合、CDCのガイドラインでは健常な人であれば、皮疹が痂皮化するまで病巣部位をカバーして登校、出勤していいことになっていますが、病巣が限局していても未感染者への接触は禁止、免疫不全がある人は患者の発疹が全て痂皮化するまで患者との接触を制限、未感染者が帯状疱疹患者に接触した場合は、接触後10〜21日は患者への接触を禁止するようにとされています。帯状疱疹の治療は、水痘の治療と同じようにアシクロビルやバラシクロビルの内服で、軽症の場合はビダラビン軟膏の塗布を行います。痛みが強い場合は、鎮痛剤を投与することもあります。痛みが強い場合は急性期に鎮痛剤をきちんと使用した方が、帯状疱疹後神経痛を防げるということもいわれています。また、疼痛が強い場合は、治療として神経ブロックを行うこともあります。
(了)
医師が語る感染症への知識のワクチンの他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
-
-
-
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方