新型コロナウイルス(COVID-19)による感染症はいまだに収まることなく拡大を続けています。COVID-19では肺炎がよくみられる病態ですが、今回はその鑑別診断にも必要となるマイコプラズマ感染症を取り上げます。

1.はじめに 

マイコプラズマは、自己増殖可能な最小の微生物で、ウイルスではなく細菌の仲間です。ウイルスと同じように粘膜などから血液中に侵入し、肺炎などを起こします。

呼吸器感染症だけでなく、他の臓器をおかすこともあります。ただ感染病態のしくみに関しては不明なことが多く、直接臓器に侵入する場合と、感染に伴う免疫反応が病態を形成する場合があると言われています。

なお、以前は3~5年ごとの周期で流行が起こるとされ、オリンピックの年に多いとも言われていましたが、近年はその傾向があまり認められなくなりました。

症状

最も多くみられるのは呼吸器感染症(写真:写真AC)

最も多く見られるのは呼吸器感染症で、咽頭炎や気管支炎、肺炎などです。副鼻腔炎やクループを起こすことはまれとされています。咽頭炎や気管支炎の症状は、一般的には軽症です。肺炎になるケースは3歳までの年少児には少なく、学童から若年成人が多いとされています。

マイコプラズマ肺炎の初発症状は発熱、全身倦怠、頭痛などが多くみられます。発熱は中等度程度ですが、39度を超えることもあります。また反対にほぼ発熱がみられない人もいます。

せきは初発症状発現後3~5日から始まることが多く、最初は乾いたせきですが、だんだんと湿性になり、粘稠な痰を伴うようになり、3~4週間続きます。喘鳴を伴ったりすることもあります。気管支喘息の増悪との関係も指摘されています。

胸部X線像は両側肺のびまん性のすりガラス様間質性陰影が多いと言われてきましたが、最近は多様なパターンをとると言われるようになってきました。局在性の異常像、胸水、肺門リンパ節の腫大が認められることもあります。

今回流行している新型コロナウイルス感染症でも、発熱や長引く咳嗽、胸部X線像での陰影などが類似しており、症状や所見だけでは区別できないこともあります。またマイコプラズマによる肺炎では10%程度で発疹が見られると言われています。

その他のマイコプラズマによる病態には、頻度は多くないですが、無菌性髄膜炎、脳炎、ギラン・バレー症候群などの神経系の疾患、寒冷凝集素が高値になっておこる溶血性貧血、血小板減少性紫斑病、肝機能障害、心膜炎や心筋炎、関節炎など様々な疾患があります。