H1N1インフルエンザウイルス(出典:Shutterstock.com)

例年より早い流行

今年は、インフルエンザの流行が例年より早く始まったといわれました。11月4~11日の週では、全国のインフルエンザ感染は定点(*)当たり1.03であり、これは流行開始の指標とされる1.0を超えていました。さらにその後の患者者数はうなぎ登りに増加し、12月に入るとその勢いはさらにまし、第50週(12月9〜15日)の定点当たり報告数は15.62(患者報告数7万7425人)となっています。今回はまさに流行中のインフルエンザについてお伝えしようと思います。

*定点:感染症には、感染症法に基づき全ての医療機関が報告しなければならない全数把握対象の疾患と、全国の医療機関から選定された協力医療機関(定点医療機関)からのみ報告を受ける疾患があり、インフルエンザは後者にあたります。定点医療機関は全国に約5000(小児科医療機関が約3000、内科医療機関が約2000)あります。これらの機関から報告された人数が「定点当たり」という表現で報告されます。

症状
インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる感染症です。風邪の一種ではありますが、のどの痛み、せき、鼻汁などの普通の風邪の症状の他に高熱や頭痛、筋肉痛、関節痛、全身倦怠感などの全身的な症状を伴います。さらに、こういった全身的な症状が急速に現れるのも特徴です。潜伏期間は1〜3日で、多くは数日から1週間程度で治癒します。ただ、まれに脳症や肺炎の合併もあります。脳症はどちらかというと小児に多く、肺炎は高齢者や免疫力の低下した方に多いと言えます。小児、未成年者では、急に走り出す、ウロウロと歩き回るなどの異常行動を起こすこともあります。

インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型と3つありますが、人に感染するのはA型とB型です。さらにこれらの型には亜型があり、現在流行しているのはA型のN1H1といわれているものです。このN1H1は、2009年に新型インフルエンザとして日本に入ってきた型で、大変なニュースになったことを覚えていらっしゃる方も少なくないと思います。

インフルエンザウイルスはもともと少しずつ抗原性を変えているため、一度かかってもまたかかってしまうことがあるのですが、時に全く異なる抗原性を持つウイルスが、出現することがあります。これが新型インフルエンザと言われているもので、多くの人が全く抗体を持っていないために、急速にまん延していきます。新型インフルエンザはいつどこで発生するかわからないので、発生すると医療全体への影響が大きくなります。過去に流行した新型インフルエンザとしては、1818〜19年に流行したスペインかぜ、1968〜69年に流行した香港かぜ、上記に述べた2009〜10年の新型インフルエンザA(H1N1)pdm(パンデミック)などがあります。

しかし、多くの国民が免疫を持つようになるにつれ、これらの新型インフルエンザも季節的な流行を繰り返すようになり、季節性インフルエンザと言われるようになります。2009年に新型インフルエンザとされたものも2011年4月からは季節性インフルエンザとして取り扱われるようになりました。またヒトは時にブタやトリ由来のインフルエンザウイルスに感染することがあるとされています。この中には生命をおびやかすウイルスも有り、常に世界レベルで監視をしています。

感染経路、感染力
インフルエンザの主な感染経路はせきやくしゃみの際に口からとびだす飛沫(小さな水滴)による飛沫感染です。感染力は強いといわれています。インフルエンザウイルスは、口や鼻や目の粘膜を通して体の中に侵入します。特に冬の乾燥は、粘膜を荒らすため、ウイルスが侵入しやすくなるといわれています。また感染した人から排出されたウイルスが、ドアノブやつり革などに付着し、それを健康な人が触り、その人の鼻や口からウイルスが身体の中に入り込んで感染する接触感染もあります。

感染していても全く症状のない(不顕性感染)例や、感冒様症状のみでインフルエンザウイルスに感染していることを本人も周囲も気がつかない軽症の例もありますが、そういった人たちからも感染はします。

感染性は、症状発現の1日前からあり、ウイルスは発症後3〜7日には排出するといわれています。最も感染力があるのは症状発現後3日間です。学校保健安全法では、発症後5日間、解熱後2日間(幼児にあっては3日間)を経過するまでは出席停止となっています。成人の場合も小児に準じるべきとは考えられますが、法律上の規定はありません。