1.はじめに

キャンピロバクター・ジェジュニの電子顕微鏡写真(出典:ウィキメディア・コモンズ)
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:ARS_Campylobacter_jejuni.jpg?uselang=ja

最終回は食中毒を取り上げます。

食中毒とは、有害な微生物や化学物質を含む飲食物を飲んだり食べたりした結果起こる健康障害を指します。胃腸炎症状としてあらわれることが多いですが、神経症状を起こすこともあります。夏に多いと思われがちですが、冬に流行するノロウイルスによる食中毒も多く、統計上は年間を通して発生しています。

2019年の日本の発生状況では、原因物質としてアニサキス、キャンピロバクター、ノロウイルスが多く、年間の罹患数としてはノロウイルスが7000名弱、キャンピロバクターが2000名弱と、ノロウイルスによる食中毒が最も多いと報告されています。

食中毒の原因として細菌、ウイルス、寄生虫(アニサキスなど)、化学物質、自然毒(ふぐ毒、毒キノコなど)などがありますが、今回は細菌性食中毒を中心にお話をしたいと思います。

細菌性の食中毒

細菌性食中毒の中には感染型と毒素型があります。どちらも細菌に汚染された食品を食べることによって発症しますが、発症の機序の違いによって感染型と毒素型に分けられます。

感染型は、食品の中で増殖した原因菌を摂取し、腸管内で感染が起こり発症します。この中には腸炎ビブリオ、病原性大腸菌、サルモネラ菌、キャンピロバクターなどがあります。

黄色ブドウ球菌の電子顕微鏡写真(出典:ウィキメディア・コモンズ)
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Staphylococcus_aureus_01.jpg?uselang=ja

毒素型は食品の中で細菌が増殖する際に毒素を産生し、その毒素を食品とともに食べることによって発症するというもので、黄色ブドウ球菌、ウェルシュ菌、腸管出血性大腸菌などがこちらに入ります。毒素型の中には生体内毒素型といって、摂取した菌が腸管内で増殖する際に産生する毒素が原因で発症することもあります。ウェルシュ菌や腸管出血性大腸菌がそれにあたります。

感染経路・症状・潜伏期間

症状やその程度は原因菌によって異なります。最も多くどの菌にも共通してみられる症状が下痢です。他によく見られる症状は嘔気・嘔吐、発熱です。嘔吐などにより脱水が激しくなる場合もあります。

潜伏期間も原因菌によってさまざまです。一般的に毒素型の方が潜伏期間は短いものが多いといわれています。