各国の右傾化傾向により、国際連合を含めた国際機関での一致した行動が難しくなっている

近年における世界情勢は、政治、経済、社会、全ての面で流動化しています。2017年に顕在化するであろう10のリスクを、以下の通り予測しました。前回に引き続き、一つずつ解説を行います。

【2017年グローバルリスク予測】

1.    グローバリゼーションの更なる進展と世界的な社会的不安の拡大
2.    欧州諸国における右傾化傾向の高まり
3.    国際機関の更なる機能低下
4.    中国情勢の不安定化
5.    朝鮮半島情勢の緊張化
6.    中東情勢の不透明化
(シリア・イラク・トルコ・サウジアラビア・イラン等)
7.    米国の国際的なプレゼンスの低下
8.    ロシアの孤立化
9.    Homegrown Terrorist/Lone Wolf Terroristによるテロの増大
10.    自然災害の増加・新たな感染症の発生

【予測されるリスク】
・国際連合等の国際機関の機能の更なる低下の可能性
・EUのプレゼンスの低下 → 欧州の不安定化の可能性
・世界的な地域紛争等の拡大と終息の長期化 等

【背景等】
現状の国際政治は世界的なリーダー不在、国連・NATO等の国際機関の機能不全等に伴い、2017年においても数々の地域紛争、テロ等が増加するものと予測されます。例えば、シリア・イラク情勢は今後も流動化は避けられず、イスラム国(IS)の問題も長期化する可能性が高いと予測されています。

また、欧州における右傾化の進展でも触れている通り、欧州諸国では右傾化傾向が顕著であり、それにより、EUとして結束する状況が薄れており、一致団結した行動がし難くなっていると言えます。

欧州以外でも、世界的に大衆迎合的な政策に傾倒する傾向が拡大しています。2016年6月にフィリピン大統領に就任したロドリゴ・ドゥテルテ氏は、大統領選挙戦で、社会から麻薬と犯罪を撲滅するという公約を掲げ、犯罪者に対する超法規的殺人も辞さないとも受け止められる発言を繰り返し、勝利しています。

また、2016年11月の米国大統領選挙では、経済政策は不透明ながらも、米国第一主義を標榜したトランプ氏が当選する等、総合的な政策よりも、分かりやすく、大衆が受け入れやすい政策を標榜する方が支持を得やすい状況が世界的に広がっています。

一方で、これらの傾向は、各国の保守化、右傾化、保護貿易主義への傾倒の傾向を助長しています。その結果、国際連合を含めた国際機関での一致した行動が難しくなっていると言えます。そのことが、ウクライナ情勢・イラク情勢・シリア情勢の流動化と国際社会の対応の不統一性、北朝鮮の核実験・ミサイル実験等に対する対応の不統一性等、世界的な地域紛争の拡大と終息の長期化を助長していると言えます。

(了)