2012/09/25
事例から学ぶ
半導体製造装置を製造するディスコは 2008 年から本格的なサプライチェーンのリスクマネジメント(SCRM) に取り組んできた。しかし東日本大震災では、主要取引先 20 社程度から部品などの調達が困難な状況になり、 同社では現在、5 次サプライヤーまでの所在地を把握するなど、SCRM を強化している。
購買本部が入る桑原工場(広島県呉市)
ディスコは、2003 年から事業継続計画(BCP) の策定に着手し、今年5月には事業継続マネジメン トシステム(BCMS)の国際規格である ISO22301 を国内で一早く認証取得するなど、事業継続体制の 確保に先駆的に取り組んできた。
主力事業は、半導体や電子部品の素材を切断・研削・研磨する装置の製造。仮に同社製品の供給が途 絶えれば、顧客である半導体や電子部品メーカーは それぞれの製品の製造が困難な状況になり、最終的 には数多くの電気製品や IT 機器の生産ができなく なるなど社会的にも大きな影響を及ぼす。特に同社 の装置の命とも言える加工部に使われている砥石は消耗品であるため、顧客に対して供給をし続けなくてはならない。
そこで、同社では 2008 年から、砥石製品の供給 を BCM の重要業務
と位置づけ、本社や主力工場が 被災しても顧客には影響を与えないよう、広島県呉 市にある免震による最新工場の中に自動倉庫を設け、主要原材料を6カ月分備蓄するなどの対策を講じてきた(写真) 。
砥石以外の製品についても、1次サプライヤーについては、所在地はもちろん、被災時における担当 者の連絡先、 BCM への取り組み体制などをアンケー ト調査で把握し、同一地域にある会社からは重複し た調達を避ける、あるいは1社だけから調達をして いる単一供給源については相手先に製造拠点の分散 や備蓄を求めるなど、サプライヤーのリスク管理に 力を入れてきた(図表) 。
事例から学ぶの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方