2017/04/06
「つながる」ことは「備える」こと
東日本大震災では福島県で1000食分を炊き出し
私たちが活動する埼玉県北葛飾郡杉戸町(すぎとまち)は、埼玉県の東部に属し、人口は4万5788人(2017.3.1現在)。町の東にある江戸川を越えた先は千葉県柏市、北には茨城県境町。まさに埼玉の東の外れにある町です。

町の成り立ちは、江戸五街道の一つ、北千住から日光へ伸びる「日光街道」の5番目の宿場町として杉戸宿が出来たのが1616年だと言われています(諸説あり)。昨年は2016年だったので、杉戸宿開宿400年という記念すべき年を迎え、「杉戸宿開宿400年 宿場まつり」と題して町の人たちを巻き込んだ一大イベントなどを開催し、私もまちづくりセクターの人間として様々に関わらせて頂きました。
そんな杉戸町で協働型災害訓練が始まったのが2013年1月。同年の国土交通省補助事業「広域的地域間共助推進事業」に採択され、その一環として始まりました。
この事業の目的は、同事業のホームページなどをご参照頂ければと思いますが、私なりに要約するなら「普段づきあいをしている仲間がいれば助けに行くよね、そのための仲間をつくりませんか」というモデルを作る事業でした。
採択された例としては、「黒潮でカツオ漁をしている都市をネットワークして助け合う仲間を作ってみます」というものもありました。しかしそれはあくまで「モデル」であり、「これからやりたいと思います」というものが主でした。
私たちもその一つとして採択されたのですが、杉戸町は福島県富岡町と友好都市であり、震災時にはその関係性を生かして実際の活動をしました。「モデル」というよりも、私たちは無意識ながら「実践」をしていたのです。ですので私たちは震災直後の行動について記憶を呼び起こして検証をしながら、「絆を強くするための地域間交流の活性化とこれらを生かした提案をしてみよう」ということで、この事業申請を行いました。
事業の主体は、杉戸町・富岡町・川内村地域間共助推進協議会。私たちが活動している埼玉県北葛飾郡杉戸町、そして友好都市である福島県双葉郡富岡町、そして富岡町の隣にある同県同郡川内村、これに2つのNPO(特定非営利活動法人すぎとSOHOクラブ、特定非営利活動法人NPO埼玉ネット)です。この5者で構成された協議会です。

私たちすぎとSOHOクラブは、新潟中越地震後に旧山古志村などと交流したことで、事前に顔見知りを一人でも作っておくことが大切なことを学び、河川でつながるまちづくり「かわまちづくり」を推進し、民間防災協定などの推進を行ってきました。そして、東日本大震災直後には富岡町が避難している川内村に駆けつけて1000食分の炊き出しを行い、その後首都圏に避難してきた方々の支援「県外避難者支援」を行わせていただいていました。
一方、NPO埼玉ネットは阪神淡路大震災の際に活躍し、東日本大震災の際には川内村へと支援に向かいその後、私たちと県内避難者支援でも協力して物資の提供などにあたりました。
6月には事業採択通知が届き、2013年6月27日に先ほどの5者により協議会を正式に設立、翌月の7月5日には川内村にて、共同記者発表を行いました。その様子は福島民報・福島民友にも掲載され、私たちの取り組みに対して関心の高さを物語っていました。

こうして私たちの事業がスタートしました。(つづく)
(了)
- keyword
- 杉戸町
- 協働型大規模災害訓練
「つながる」ことは「備える」ことの他の記事
- カッパ汁届けに「富岡救援隊」を結成
- 有事の際に助け合う仲間との広域共助
- 杉戸町の人々の第二の故郷だった富岡町
- 「誰にとっても心地よい社会」を目指して
おすすめ記事
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方