PPEの組み合わせ(アンサンブル):アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)防護レベル

PPEを選択する過程では、適切なレベルの防護を確保するとともに、CBRNE災害活動に際して活動しやすいPPEの組み合わせと資機材を調和させなければならない。

例えば、シンプルな防護服の手袋や作業着と全面形マスク(またはセーフティゴグル)の組み合わせで、ある病原体物質(血液媒 体病原菌)への曝露防護には十分かもしれない。他方、陽圧式化学防護服、SCBA併用の完全密閉型スーツの選択は、蒸気、ガスまたは皮膚吸収する危険がある有害物質の粒子を取り扱う事案では、最低限の防護レベルと想定されている。

米国環境保護庁(EPA)は、CBR物質が関連している事案に使用される防護具のレベルを確立している。 レベルA、レベルB、レベルCおよびレベルDの4種類である。NIOSH、労働安全衛生局(OSHA)および米国沿岸警備隊(USCG)もこの防護レベルを採用している。このレベル分類は、アンサンブル作成を立案する際の着手点としても活用できる。しかし、各アンサンブルは最適なレベルの防護を確保するため、状況に応じて組み合わせなければならない。

今回の新型コロナウイルス感染症が発生した当初、消防の救急隊員はどのレベルが適切なのか?という質問があった。筆者は「レベルBとCの中間位のレベルが適切ではないか」と一部のコミュニティーに対して発言したが、その直後、オクラホマ州の救急隊員がレベルBで救急搬送している映像を見た。

紙幅の関係上、ここで全ての防護レベルの解説は割愛させていただくが、レベルBおよびレベルC防護の二つについては解説をしようと思う。

【レベルB】

写真を拡大 レベルB防護、別名:液体飛沫防護

レベルB防護では、自給式呼吸器(SCBA)または送気マスク(SAR)を装着することが可能なスーツが必要で、危険物質の飛沫からの防護を行う。このレベルの資機材としては、空気呼吸器、フード付き飛沫感染防御スーツ、インナー・アウター手袋、および化学防護ブーツが含まれる。この組み合わせは、最大級の呼吸器保護が必要な際に装着される。レベルBアンサンブルでは液体飛沫保護を行うが、化学物質蒸気やガスからの皮膚の保護機能は限られている。レベルBの化学防護服(CPC)には、完全密閉型・非密閉型両方がある。

レベルBアンサンブルは、以下の状況下で使用する。 

●物質の種類および大気中濃度が把握されており、高レベルの呼吸器保護が必要とされ、低レベルの皮膚保護が必要な場合
●大気中酸素濃度が、19.5%(※日本では18%)未満あるいは23.5%を超える場合
●同定されてない蒸気またはガスの存在が検知機器で感知されているが、皮膚に有害な、あいは皮膚に浸透可能な物質が高い濃度で含まれていないことが分かっている場合
●液体または粒子の存在が確認されているが、皮膚に有害な、あるいは健全な皮膚に浸透可能な物質が高い濃度で含まれていないことが分かっている場合

【レベルC】

写真を拡大 レベルC防護

レベルC防護は、呼吸器保護のための装備がレベルBとは異なっている。レベルCは、全面形または半面形のろ過式呼吸用保護具、フード付き飛沫防護服、インナー・アウター手袋、化学防護ブーツのコンビネーションで構成されている。

緊急対応要員は、物質が同定され、計測され、かつ現場指揮官(IC:Incident Commander)によって承認されていなければ、この防護レベルを使用することはできない。全てのろ過式呼吸用保護具および電動ファン付き呼吸用保護具は前段で述べた適合条件を満たしてなければならない(つまり、物質が同定され、適切なフィルターを備え、大気中酸素濃度が19.5(※日本18)~23.5%の間で、環境中大気はIDLHではないという状態)。このレベルのPPEを使用する際には、定期的な環境モニタリングが必要となる。

レベルCアンサンブルは、以下の状況下で使用される。 

●大気汚染物、液体飛沫、または直接の接触により、露出した皮膚に副作用をもたらすことがなく、かつ皮下吸収されることがない場合
●大気中有害物質の種類が同定されており、濃度も測定され、不純物除去のためのろ過式呼吸用 保護具が使用可能な状態
●ろ過式呼吸用保護具使用のための基準が満たされている
●化学物質の大気中濃度が、IDLHレベルを超えない。大気中の酸素濃度19.5(※日本18)~ 23.5%の間

PPEの詳細については、説明しなければならないことが多岐にわたり膨大な情報量になってしまうので、詳しくは弊社が出版している「消防業務エッセンシャルズ第6改訂版」をぜひ参照していただきたいと思う。

次回の連載では、院内感染を必要以上に発生させないために重要な動線管理を含む総合的な「ゾーニングのマネジメント」について解説する。