長期的観点~デジタルトランスフォーメーションによるリスク

長期的な観点については、企業がこれから長く存続していく上で、次の3つの点が重要と考えられます。

1. 社員の世代構成~考え方の異なるさまざまな世代が一緒に仕事をする
2. グローバリゼーション~考え方の違う人たちと同じ仕事をする
3. デジタルトランスフォーメーション(DX)~多種多様なデジタルツールを活用して仕事をする

1. 社員の世代構成~考え方の異なるさまざまな世代が一緒に仕事をする

日本では、働き手を生産年齢人口として、15~64歳と捉えて議論されることが多いですが、この50歳離れた人たちの間には、仕事に対する考え方が多様に存在することが、経験からもお分かりになるのではないかと思います。終身雇用が当たり前の世代と、転職することが当たり前の世代と、正規社員にこだわらない世代。会社に行って働くことが当たり前の世代と仕事する場所など気にしない世代。度合いは世代間(約3~10年が一世代と考える)で少しずつ違えど、考え方に格差があることがITリスクにもなります。

特に、ジョブホッパーといわれる人たちによる情報の持ち出し、オフィス環境ではない場所での機密情報やプライバシーの流出は、企業の大きな懸念であることが考えられます。

2. グローバリゼーション~考え方の違う人たちと同じ仕事をする

日本のビジネスが世界に進出して久しいですが、グローバリゼーションに悩む企業は多いようです。インターネットに国境はないといわれても、考え方や文化には違いがあり、それがITリスクに直結することもあります。特に日本では大きな問題となる機密情報や個人情報の流出などでも、国によって考え方に差があります。一例として、RSAが2019年に行ったデータプライバシーに関する調査(*3)の一部を紹介しましょう。

ここで重要なのは、どの国が正しい、あるいは間違っているということではなく、差が存在するのだということを認識しておくことです。

3. デジタルトランスフォーメーション(DX)~多種多様なデジタルツールを活用して仕事をする

1.と2.は、まさにこのDXからきているといっても過言ではありません。DXによって、どの世代に属しているか、あるいは世界のどこに住んでいるかに関係なく、全員がデジタルでコミュニケーションを取り、モバイル化された社会で企業の目的を遂行することになります。世界中の多くの労働者が、共同の仕事環境、自由を求めています。企業には、どこからでも仕事ができること、仕事をするのに必要なデバイスとアプリケーションを選択できる能力があることが求められます。これにより企業は、クラウドやモバイルの活用を推進し、従業員個人のモバイルデバイスやIoTデバイスも利用させざるを得なくなると考えられます。これらの多種多様のプラットフォームとデバイスの利用にITリスクが伴うことは、言うまでもないことです。

長期的な観点でも、そのリスクの種類は多くありますが、まずはしかるべき従業員が、正しいアクセス権限を持って、正しい行動をとっているかを見極めておくこと(モニタリングしておくこと)が重要と考えます。オフィスで従業員に仕事をしてもらう場合でも、同じような確認をしているわけですが、リモートアクセスというデジタルの場合でもそれは同じです。具体的には、リモートアクセスの本人認証が高い認証技術で実現されていて、従業員のアクセス権限が定期的に監査されており、デジタル上の行動が特異なものでないかどうか監視しておくことについて、順番に取り組まれていくことをお勧めします。

今人類が直面している危機は、私たちの働き方自体を変えています。世界ではそれをニュー・ノーマル (New Normal) と言っていますが、それはやがてニュー・スタンダード (New Standard) になり、業界によって浸透の濃淡はあれ、定着していくことになると考えています。リモートアクセス環境を整えることは、今に始まったことではありませんが、多様な働き方に対するITリスクを軽減するために、今から準備することは決して遅くありません。

(*1)世界経済フォーラム 2020年3月17日記事
Why cybersecurity matters more than ever during the coronavirus pandemic
https://www.weforum.org/agenda/2020/03/coronavirus-pandemic-cybersecurity

(*2)「テレワークを実施する際にセキュリティ上留意すべき点について」
https://www.nisc.go.jp/active/general/pdf/telework20200414.pdf

(*3)データプライバシーに関する調査(RSA Data Privacy & Security Survey)
https://www.rsa.com/content/dam/ja/misc/rsa-data-privacy-and-security-survey-2019.pdf