2025/11/11
インタビュー
入国審査で10時間の取り調べ
ロシアのウクライナ侵略開始から間もなく4年。ウクライナはなんとか持ちこたえてはいるが、ロシアの占領地域はじわじわ拡大している。EUや米国、日本は制裁の追加を続けるが停戦の可能性は皆無。プーチン大統領の心境が様変わりする兆候は見られない。ロシアを中心とする旧ソ連諸国の経済と政治情勢を専門とする北海道大学教授の服部倫卓氏は、9月に現地視察のため開戦後はじめてロシアを訪れた。そして6年ぶりのロシアで想定外の取り調べを受けた。長時間に及んだ入国審査とロシア国内の様子について聞いた。
目的は現地視察
北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター教授 服部 倫卓 氏
(はっとり・みちたか)
東京外国語大学外国語学部ロシア語学科卒。北海道大学大学院文学研究科博士後期課程修了(学術博士)。在ベラルーシ共和国日本国大使館専門 調査員などを経て、2020年4月に一般社団法人ロシアNIS貿易会・ロシアNIS経済研究所所長。2022 年10月から現職。
――ロシアには何の目的で渡航したのでしょうか?
2022年2月のロシアによるウクライナ侵略後、初めてのロシア訪問でした。目的は視察です。人々の生活や町の雰囲気など、今のロシアを自分の目で確認したかった。極東とシベリアに行く予定でした。現段階で、所属する北海道大学では業務としてのロシア出張が認められていないため、仕事ではなく夏休みの私的旅行の位置づけです。北京経由でウラジオストクから入国し、石油産業の中心地であるスルグト、シベリア最大の都市であるノボシビルスクと重要都市であるバルナウル、アジア系の少数民族が住むウランウデを回りました。
――なぜ、ウラジオストクに到着直後の入国審査で取り調べを受けることになったのでしょうか?
見立てが甘かった。というのも、私はウクライナ侵略でマスコミを通じてロシアを批判することが多く、過去にはロシア国内で工場を撮影しようとして、警察官に事情を聞かれた経験もあります。ロシア側は、私の素性をつかんでいて身元がばれていると考えての渡航でした。だからこそ入国できるかは、行ってすぐに判明するものだと考えていました。
入国拒否も想定済みです。いずれにしろ、入国可否の判断はすぐにつけられると考えていました。それがまずかった。入念に取り調べられるとは、思ってもいませんでした。だから普通の旅行感覚のようにスマホやパソコンを含め持ち物の対策は全くしていませんでした。調べられれば、それはいろいろ不都合な代物が出てきます。その結果が10時間の足止めでした。
――ウクライナ侵略を理由に制裁を行う日本を「非友好国」とみなすロシアが出した入国禁止の対象者リストには元首相や閣僚、メディア関係者だけではなく、学者も数人含まれています。
短期滞在ビザも問題なく発行されました。もちろん、ビザ発行と入国は別物で、先にも述べたように入国拒否の可能性も織り込んでいました。ただし、ウクライナ侵略後のロシアに入国できた学者仲間も複数いました。それがプーチン政権に批判的であっても。もちろん、私も含め入国禁止対象外です。彼らから厳重に調べられたという話はなかったので、警戒はそれほどしていませんでした。
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