2013/11/25
誌面情報 vol40
管理組合に災害対応マニュアルを提示
案を示し、各管理組合でアレンジを
同社は、管理組合の共助による災害対策を促すために、「震災時対応マニュアル(案)を作成した。」震度5強以上の震災時の利用を想定したもの。施設設備の整 備や点検、防災活動やコミュニティ活動からなる事前対策のほか、発災1日目の「発災期」発災、2~3日目の「被災生活期」、発災4日目以降の「復旧期」の 4つの場面に応じて基本的に何を行ったら良いかの要領を定めている。マンションは、規模や種類、築年数によって、前提状況が異なるため、あくまでも叩き台 の形で配布し、マンションごとに独自のマニュアルを作成してもらうことを基本としている。
事前対策点検・備品確保と組織編成
マニュアルでは、管理組合の事前対策に必要なものとして、①施設・設備の整備と点検、②防災・コミュニティづくり、③地域との連携、④避難経路および各階の集合場所の確認の4つを挙げている。
施設・設備に関しては、エントランスホールや共用廊下などの状況を確認した上で、対策本部や待避所など震災時に活用できる場所の利用方法を定める必要性を指摘している。
共用設備については、消火設備、非常用発電機、エレベーター地震対応装置の設置状況のほか、受水槽の水など防災に活用できる設備の状況を事前に確認することを勧めている。
また備蓄品については、在庫状況を確認した上で、必要な備品のリストと購入計画を作成し、期限切れを含めて備蓄品の管理の必要性を促している。
防災活動の事前対策では、防災組織の編成、居住者名簿の作成、要介護者の状況把握と日常的な見守り体制の検討、および防災訓練の計画と実施の必要性を挙げ、コミュニティづくりでは、階ごとの日常的な声がけやあいさつの大切さを説いている。
防災組織の編成については、管理組合の理事会役員が中心となって話し合い選任することとしている。災害対策のトップとサブには、管理組合の正副理事長が務めるほか、情報班、救護班、安全班、物資の4つの班編成の必要性を挙げている。
発災したら災害対策本部を立ち上げ
次は発災後の対応。発災1日目の発災期は、各住戸の活動がひと段落したら、階ごとにエレベーターホールなどに集合し、階ごとの活動に取り組むことを勧めている。
最初の取り組み事項は、階の災害対策のリーダーと役割分担を決めること。次は住民の安否確認。階別の安否情報を紙に記入するよう勧めている。続いて救助と救 護。安否不明の世帯については、玄関ドアを叩いて呼び掛ける。負傷者がいた場合、軽傷なら応急手当てを行い、重傷なら、対策本部を通じて消防署に救助を依 頼することを推奨している。
もし、住戸内に閉じ込められた人がいたら、自分の身の安全を確保しながら救助に当たるよう促している。また、医師や看護師、介護経験者への協力要請、災害時要援護者と負傷者の誘導を必要に応じて行うことも明記している。
情報・救護・安全・物資の4班を編成
いざ、震度5強以上の地震が発生した場合は、対策本部を設置するよう促している。対策本部が担うのは、情報収集、情報発信、活動指示の役割。正副本部長、情 報・救護安全の各班長の5人が中心となって全体の活動を指示。他の居住者や防災担当者は、対策本部の活動に協力するとしている。
本部長は、各班の配置の指示、各班からの情報や報告を受けて、建物全体の状況を把握し、災害対策の検討や活動全体の指揮を執るのが役割。本部長は常に対策本部に在籍し、活動の指示に徹することとしている。
情報班は、安否情報の情報収集と情報の整理、各階への連絡と居住者への近況報告を担う。救護班は、待避所を開設して運営するほか、各階の救護活動の応援も手 伝う。安全班は、建物や設備の安全確認や備蓄品の手配のほか、居住者、帰宅者、来訪者の出入口での往来のチェックも担うとしている。
2~3日目は対策本部をより充実
発災から2~3日目の被災生活期には、エレベーターや電気、ガス、水道が使えないことを前提とし、同時に帰宅者の増加を踏まえ、対策本部の充実を図ることを強調している。
対策本部は、新たに物資班を加えた6人体制とし、本部会議を開いて活動を指示する。各班の班員は、各階の居住者から有志を募って拡充する。救護班は、医療・福祉関係、安全班は、建築関係の専門家の応援も要請するとしている。
物資班は、備蓄品の管理に加えて、飲料水や救援物資の手配と炊き出し、臨時のゴミ集積所の設置も担う。安全班は、1日目の業務に加え、建物内の見回りや町会の防犯活動にも協力する。
分譲マンションでの場合、被災時においては、建物全体ではなく各階ごとに生活を支え合うのが基本としている。このため、発災から2~3日目の被災期においては、各階の体制も充実させ、被災生活をより強力にサポートできるよう支え合いに努めることが重要としている。
なお、4日目以降の復旧期においては、~3日目の活動を維持しながら、2ライフラインの復旧状況により、対策本部を廃止したり、待避所を閉鎖するなど、平常時の管理組合や自治会による活動に移行させるものとしている。
誌面情報 vol40の他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
-
-
-
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方