ERC初心者のための3つのステップ

もしあなたが社内でERCの質を高めていくための活動に着手したいとお考えであれば、以下の3つのステップを踏むとよいでしょう。

①トップにコミットメントしてもらう
②参加しやすい場をつくる
③リスクの洗い出しを行い、対応策を決めておく

経営そのものと言っていいERCの取り組みは、現場だけでは進みません。「トップにコミットメントしてもらう」ことは何より重要です。しかし、「このリスクが大きいです」と現場が声を上げても、根拠データに乏しいとトップは思い切った意思決定ができません。例えば、経営陣が集まる会議体などで、あなたの会社の同業他社で起きた不祥事に関する事例のリポートを定期的に共有することから始めるのをお勧めします。長時間ではなく、10~20分程度の短時間で実施するとより効果的です。この身近な業界内の事例共有を通じて、リスクを正当に評価することは、危機を好転するチャンスを見逃さないことにつながることだと理解してもらいましょう。トップにどれだけコミットメントさせることができるかが、ERCの明暗を分けるのです。

次いで大事なのが「参加しやすい場をつくる」ことです。あなたが時代の流れを察知し、リスクのトレンドや傾向を把握しながら伝え続けることで、やがて賛同してくれる人は増えていきます。ERCはポジティブイベントと浸透できるよう、場の空気を軽くし、継続的にカジュアルに行えるよう工夫が必要です。

話し合いの場では目的、意図を共有しましょう。全員の声が必要なことを明確にし、建設的に対応できるように互いの意見を「聴く」技量を高めます。また、設問を投げかけて議論させるだけではなく、個別インタビューでの検討、グループ討議、全体討議など場面に応じた手段をうまく使い分けます。誘導を避け、経営陣をはじめ参加するメンバーの「恥をかきたくない」などの気持ちが生まれるプレッシャーを与えないように配慮するのです。いかに当事者意識を持ってもらいながら巻き込んでいくか、それができるかできないかで大きく効果が変わってきます。取り組みが重くなると、現場の業務効率を妨げるだけに終わってしまうのです。

上記2つのステップでトップを巻き込み、参加しやすい場をつくれたら、ERC向上の取り組みは5割がた成功したと言っても過言ではありません。ERCに取り組もうする担当者はほとんどこの前段階で挫折してしまいがちですが、ここまでできたら後は「リスクの洗い出しを行い、対応策を決めておく」こと。こちらは第2回の「プロレスラーに学ぶ、称賛を集めるリスクコミュニケーション」でご紹介した。事前に決めておいた方がよいことを参考にしてみてください。