2021/07/27
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!
ランサムウェアとは、2017年ごろから被害例が急増して世界的に注目されるようになったもので、コンピューターの操作をロックしたりデータを暗号化してデータへのアクセスができないようにし、これらの解除と引き換えに身代金を要求するものである(注1)。
2021年にも既に多くのランサムウェア事件が発生しているが、最も世界で注目された事件の一つは、2021年5月に米国のコロニアル・パイプライン(Colonial Pipeline)がランサムウェアによる攻撃を受けたことによって、米国東海岸における燃料供給が数日間にわたって停止した事件である。この事件は「DarkSide」という犯罪者グループによる攻撃であったが、最近はランサムウェア攻撃の分業化が進んでいるという。
図1はそのようなランサムウェア攻撃の分業の例であり、本報告書では「Ransomware as a Service」(略称:RaaS)と読んでいる。図のいちばん上にある「Ransomware Group」が、多額の身代金を払える財力を持つターゲットを選んで攻撃を仕掛け、身代金を受け取るという主導的な役割を担っている。
一方、下の方に書かれているのは、ランサムウェアおよび関連ツールの開発、ターゲットのネットワークへの侵入、侵入に必要な情報分析、身代金の交渉、受け取った身代金のマネーロンダリングといった役割分担である。これらは必ずしも固定的なメンバーではなく、案件ごとにこれらの分野に長けたメンバーが集まって、成功したら報酬を山分けするという仕組みになっているようである。
このような形で、それぞれの分野で高度な技術を持つメンバーが集まることによって、ランサムウェアの攻撃がより高度になっていくので、ターゲットになりうる企業側としては従来以上に対策に力を入れていく必要があるであろう。
なお、図2はこれまでのランサムウェア事件を調査した結果からNozomi Networksが推奨している、10種類のランサムウェア対策である。これらのうち特に「OT Network Monitoring」や「IoT Network Monitoring」がNozomi Networksの強みであるが、「Post-Breach Mindset」(攻撃された後のことを考えておく)や「Disaster Recovery Planning」(災害からの復旧のしかたを計画しておく)は事業継続マネジメントにも通じる部分であると考えられる。これらの詳細については本報告書本文をご参照いただきたい。
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!の他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
-
-
-
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方