2021/09/14
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!
本報告書によると、サプライチェーン攻撃の半数以上が、サイバーセキュリティーの分野ではよく知られた攻撃者や、特定の組織に狙いを定めてさまざまな手段を駆使して侵入を試みるグループによるものだという。つまり愉快犯のようなものではなく、目的がはっきりしているプロの仕事が多いということも、他のサイバー攻撃とは異なる特徴とも言える。
図1はサプライチェーン攻撃の典型的な事例の一つである。攻撃者(ATTACKER)はSolarWinds社のネットワークに侵入し、同社が開発し、販売しているOrionというネットワーク管理システムのプログラムにマルウエア(注4)を紛れ込ませることに成功した。顧客がSolarWinds社のサイトからOrionのアップデート用ファイルをダウンロードし、それを自社で運用しているOrionに適用した時に、攻撃者が紛れ込ませたマルウエアが顧客のシステムに組み込まれた。攻撃者はそれを使って顧客から情報を盗み出している。
この事例に関して、攻撃者がサプライヤーに侵入する時に用いられた手法については、「ゼロデイ脆弱性の悪用、またはブルートフォース攻撃(注5)、またはソーシャル・エンジニアリング(注6)かも知れない」と記述されている。つまり、どのような手口で侵入されたか分かっていないのである。
これもサプライチェーン攻撃の実態を端的に表わしているといえる。本報告書によると、侵入されたサプライヤーのうち、用いられた攻撃手法が分からない事例が66%を占めるという。これとは対象的に、侵入された顧客のうち攻撃手法が分からないのは9%未満である。これは顧客側に比べてサプライヤー側で、侵入を検知したり、侵入されたことを調査・報告するための仕組みや体制が不十分であることの現れと考えられており、本報告書ではこのようなギャップが問題視されている。つまり攻撃者はこのようなギャップに目を付けて、脇の甘いサプライヤーを狙って攻撃を仕掛けてくるのである。
筆者が見聞きする範囲でも、一般的な知名度の低い企業などの方々の中には、サイバー攻撃に関して「ウチのような無名な弱小企業は狙われないだろう」と認識されている方が少なくないが、このような形で踏み台にされるリスクが、むしろ最近高まってきていることを踏まえて、対策状況を見直す必要があろう。
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/08/05
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/08/04
-
-
-
-
令和8年熊本地震 猛暑の被災地で熱中症を避ける
最大震度7を記録した令和8年熊本地震。熊本県内では400超の避難所が開設され、約9千人が避難している(29日時点)。真夏の避難生活は、熱中症の危険性を確実に高める。しかもこれからは、猛暑・酷暑下での復旧活動が本格化し、多くの人々が被災地で活動する。現地で熱中症をどう防いだらいいか。熱中症と災害医療に詳しい、さいたま赤十字病院高度救命救急センターの席 望医師に対策を聞いた。
2026/07/30
-
令和8年熊本地震 広がるデマ、どう見分ける?SNSとの向き合い方
28日に発生した最大震度7を記録した熊本地震では、早くも豪華寝台列車「ななつ星」が脱線したなどのデマ情報が広く拡散された。災害のたびに、広くSNSで拡散される情報にどう向き合えばいいか。デジタル空間の情報分析を専門とする Japan Nexus Intelligence の竜口七彩氏に聞いた。
2026/07/29
-
-
事例研究で有事に備え、組織の体質改善で形骸化を防ぐ
組織レジリエンスの強化やサイバーセキュリティーの向上、サプライチェーンの強靭化など、危機管理やリスク管理担当者が関与する領域は年々拡大している。変化する社会状況にあわせ、担当者はどのように学び、備え、対応することが求められるのか。森総合研究所代表の森健さんは、自治体と企業で危機管理担当者としての経験を積み、現在はコンサルタントとして、企業や団体の危機管理の支援を手がけている。自身の経験を踏まえ、危機管理の担当者にどうアドバイスしているのか、話を聞いた。
2026/07/27
-






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方