復興に向け、まずは仮設住宅を無くして普通の生活に戻れるようにすることが最重要課題とする。

災害時におけるトップの役割とは何か―。ひとたび大災害が発生すると、自治体の首長には一気に権限が集中します。災害対策本部の機能や業務内容は地域防災計画の中にも書かれていますが、災害対策本部長である首長がどのように状況を判断して決断・指示すればいいのか、いかなる責任を負うかについて具体的に明記されているものは見たことがありません。

熊本地震では、庁舎が使えなくなるなど、極めて困難な状況の中、各自治体は災害直後から情報の収集、避難者への対応などに奔走しました。その時、各自治体の首長は、何を考え、どう行動したのでしょうか? 最も困難な事態は何で、どうそれを乗り越えたのでしょうか――。

昨年末、熊本県から「熊本地震への対応に係る検証アドバイザー」に任命され、熊本県知事と県内8市町村長(震度6強以上の揺れを観測し、かつ、応急仮設住宅を建設した市町村)にインタビューを行い、これらの事実をオーラルヒストリーとしてまとさせていただきました。
参照:熊本地震の発災4か月以降の復旧・復興の取組に関する検証報告書(http://www.pref.kumamoto.jp/kiji_23049.html?type=top

ここに掲載したすべての首長のすべての判断・決断が最善であったかどうかを、このインタビュー内容だけで検証することはできませんが、組織のトップとして、いかにその役割・責任を認識し、全うしようと考えていたのかを知ることは、自治体に限らず、企業を含めたあらゆる組織のトップ、あるいは危機管理担当者にも参考になるはずです。

リスク対策.comでは、オーラルヒストリーでまとめたインタビュー内容を全9回にわたりシリーズで紹介していきます。「もし自分がその場のトップだったらどう指揮をとるか」という意識を持って読んでいただければ幸いです。第7回は、震災から1年近く経った2017年2月の選挙で新たな首長に就任した南阿蘇村の吉良清一村長へのインタビューです。文末には、危機対応時にトップが考えるべき点を、個人的な見解としてまとめてみました。

オーラルヒストリー№7 南阿蘇村長 吉良清一氏
『震災1年後に新村長に就任』

吉良清一(きら・せいいち)氏

 

 

 

 

 

震災から1年近く経った2017年2月の選挙で新たな首長に就任。
まず心掛けたのは、三役の人事と、徹底して職員や村民の意見を聞くことだった。

■基本情報
【職員】164人  【面積】137.32㎢
【人口】11,077人  【世帯数】4,496世帯

■被害の概要
【人的被害】
死者 29人、負傷者 151人
【住家被害】
全壊 697件、大規模半壊 179件
半壊 770件、一部損壊 1,183件
【庁舎等の被害】
発災当時、久木野庁舎・白水庁舎・長陽庁舎の三庁舎による分庁方式で業務を行っており、天井のはがれ等の被害が発生した。発災前より新庁舎の建設を進めており、平成29年4月3日に新庁舎が完成した。新庁舎建設後の旧3庁舎の利活用については、現在検討を進めている。