ウクライナ南部ヘルソン州のカホフカ水力発電所のダムが決壊してから13日で1週間となり、洪水で冠水したドニエプル川下流域の被災地域の水位は低下し始めた。ただ、国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、ウクライナ側、ロシア側双方の実効支配地域で少なくとも住民計4400人が退去を強いられており、ウクライナ当局や国連などが支援を本格化させている。
 OCHAの11日時点のまとめによれば、洪水による死者は少なくとも14人で、ウクライナ支配地域では29人が行方不明になっている。
 冠水地域の平均水位は9日時点の5.4メートルから4メートルまで下がったが、ウクライナ側とロシア側で実効支配地域が分かれるヘルソン州全体では、46町村が依然冠水しているとされる。同州の西隣のミコライウ州でも、31町村が洪水の被害を受けている。
 ダムは水資源の供給源でもあったため、洪水以外の影響も深刻だ。OCHAはこれに関し、16万人以上が水不足に直面している東部ドニプロペトロウシク州の状況が、とりわけ懸念されると警鐘を鳴らした。
 一方、決壊の原因は依然、明らかになっていない。ウクライナ政府は、同国軍の反転攻勢の妨害を狙った「ロシアのテロ行為」(ゼレンスキー大統領)という主張を強めている。決壊時に爆発の振動が検知されたとの情報もあり、欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表(外相)もロシアの関与を指摘した。
 国際刑事裁判所(ICC)はウクライナ政府の要請を受けて、真相究明の捜査に着手。ICC代表団が被災地域を訪問し、ゼレンスキー氏は11日、「捜査は世界全体の安全にとっても極めて重要だ」と強調した。
 これに対しロシア側は、決壊はウクライナの破壊工作だとし、「環境的、人道的災害につながる野蛮な行為だ」(プーチン大統領)と非難している。ロシア軍は被災地域でも軍事活動を続け、ゼレンスキー氏が明らかにしたところによれば、ヘルソン州で11日にロシア支配地域からウクライナ側に避難しようとしていたボートがロシア軍の攻撃を受け、3人が死亡、10人が負傷した。 
〔写真説明〕11日、ウクライナ南部ヘルソン州の州都ヘルソンで、冠水した地域から市民を避難させる救助隊(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)