ウクライナのゼレンスキー大統領は30日、動画演説で「ロシアの侵攻は失敗した。戦争は徐々にロシアの象徴的な中心や軍事基地に押し戻されている」と述べた。「中心」の詳しい説明はないが、モスクワの新都心「モスクワ・シティ」の高層ビルに30日、ドローン2機が墜落した事件を念頭に置いている可能性がある。
 ウクライナは事件への関与を公式に認めていないものの、ロシア国防省は「(ゼレンスキー政権の)テロ攻撃」を阻止したと主張。7月にモスクワにドローンが飛来したのは4回目で、市民も戦争を肌身で感じ始めているもようだ。
 モスクワ・シティには高層ビルが立ち並び、日系現地法人を含む内外の民間企業だけでなく、ロシアの経済官庁も入居している。SNSには、ドローンが墜落して爆発する瞬間の動画や、ガラスが散乱した写真が投稿された。
 「ロシア版グーグル」と呼ばれるインターネット最大手ヤンデックスは、損傷を受けたビルにオフィスの一つを構える。独立系メディアによると、同社は事件後、午前1時から6時までオフィスを利用しないようモスクワの全従業員に通知した。ドローン攻撃が主に未明に起きることを踏まえた安全対策とみられる。
 ドローンが7月24日、国防省の近くに落下した衝撃は特に大きく、プーチン政権は報道しないよう主要テレビに通達を出したと言われる。ロシア経済の中心が狙われた今回も同様の措置が取られた可能性が高く、テレビはほぼ黙殺。プーチン大統領が北西部サンクトペテルブルクで「海軍の日」の観艦式に臨んだ様子ばかりを放映した。 
〔写真説明〕30日、ドローン落下により損傷を受けた新都心「モスクワ・シティ」の高層ビル(AFP時事)
〔写真説明〕ウクライナ南部オデッサ州沖のズミイヌイ(スネーク)島を訪れたゼレンスキー大統領=ウクライナ大統領府が8日提供(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)