【ニューヨーク時事】国家安全保障に詳しい元官房副長官補の兼原信克氏はオンラインで時事通信のインタビューに応じ、2020年代のうちに起こり得るとの見方がある台湾有事について「(中国軍は)能力的に開戦可能だ」との見解を示した。軍備拡張を進める中国の武力侵攻を防ぐ上で、先端半導体の対中輸出管理強化がカギを握ると指摘。巨大市場を武器に中国が相手国からの輸入を止める「経済的威圧」への対処も課題だとした。
 現代の戦争は情報処理能力が戦況を左右するとされ、兼原氏は「半導体(の獲得競争)が勝負になる」と説明する。中国による先端半導体の軍事転用防止へ日米オランダが輸出管理を厳格化したことで、「この分野は米中で完全にデカップリング(分離)されている」と分析。台湾有事を防ぐには半導体規制に加え、日米欧豪など西側諸国がグローバルサウスの盟主であるインドなどを引き込み、団結を強めて対抗することが重要だとみる。
 一方、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を理由に、中国が日本産水産物を禁輸したことについて、兼原氏は「半導体(規制)の意趣返しだ」との見方を示した。
 台湾問題に関連して日米が連携を深めれば「中国は機会あるごとに(経済的威圧を)やる」と強調。対中リスク軽減には、経済的威圧を受けた国の物品を買え支える仕組みの構築も含め、サプライチェーン(供給網)強化が必要だと説いた。 
〔写真説明〕元官房副長官補の兼原信克氏(笹川平和財団提供)

(ニュース提供元:時事通信社)