2024/06/17
防災・危機管理ニュース
【ベイルート時事】イスラエル軍とレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの交戦の影響で、レバノン南部の住民約9万4000人が避難生活を送っている。昨年10月のイスラエルとパレスチナのイスラム組織ハマスの衝突を機に交戦が激化してから8カ月以上が経過。イスラエルの攻撃で住居も職も失った住民は「未来が見えない」と途方に暮れている。
「家にいるだけで戦闘員だと見なされて殺される」。イスラエルから数キロの町ヒアムで家具職人として暮らしていたハッサン・アイヤシュさん(50)は、昨年10月末に妻と息子3人と首都ベイルート郊外に退避。兄弟が所有するアパートの一室に身を寄せている。
イスラエル軍はヒズボラ戦闘員や武器庫を標的にしていると主張し、レバノン南部の集落を空爆。ヒアムはたびたび攻撃を受け、町は壊滅状態に。アイヤシュさんの自宅も4月に空爆を受け、跡形もなくなった。
ベイルートで職を探しているが、見つからない。2020年にデフォルト(債務不履行)に陥ったレバノン政府は「支援する」と言うだけで具体的な対策はなく、ヒズボラの援助は犠牲者家族が対象で避難民は含まれないという。
貯金を切り崩し兄弟に頼る生活が続いている。アイヤシュさんは「帰る場所も仕事もない。どうすればいいのか、もう分からない」と嘆いた。
ヒアムで、友人や隣人は生業とは別にヒズボラメンバーとして活動していた。イスラエル軍の侵入を抑止しているとして、ヒズボラは尊敬の対象だという。
イスラエルに近い集落では、あくまで自衛目的だが、数年前から住民が武器の所持を開始。アイヤシュさんもAK47自動小銃を手に入れた。イスラエル軍がレバノン領内に入れば、ヒズボラかどうか関係なく、「皆がイスラエルと戦う」と強調した。
〔写真説明〕レバノン南部から退避したハッサン・アイヤシュさん=13日、ベイルート郊外
〔写真説明〕イスラエル軍の空爆を受けるレバノン南部ヒアム=2月9日(AFP時事)
(ニュース提供元:時事通信社)


防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方