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レジリエンスとは、あるレジーム(体制、制度)にとどまるために、閾値内で変化を受容し、擾乱を吸収できるシステムを再生する能力のことである。また、適応可能性とは、社会生態システムが経験や知識、記憶を踏まえ学習し、外部からの変化や擾乱およびシステム内部の変動に対応して、レジームにとどまりながら発展しようとする力のことを指す。社会の抱える課題を解決して適切なレジームにとどまろうとする能力はレジリエンスと呼ぶことができる。そして、企業がビジネスを通じてそのシステムを変革し課題解決に貢献することは、社会のレジリエンスを進展させ、社会の中で存続し続ける企業の適応可能性を高めることにつながる。このような意味から、ソーシャルリスクに対するレジリエンスの視点は企業にとって今後ますます重要なものと考える。

社会現象や自然現象の中には、時間とともにストレスが溜まっていくシステムが観察される*1。これらのシステムはいずれ自己崩壊する可能性を秘めている。このような事態の発生をどのように捉え、それに対して準備・対応していくのかどうかは企業それぞれの判断の問題となる。しかし明確に言えることは、そのような事態が事実上起きないものと考えて何の対応もしなければレジリエンスは低下する。今、社会にも企業にも、そして個人にも、レジリエンスに対する能動的なスタンスが問われている。

*1: 例えば、地震は、地殻を構成するプレートが移動して歪みが溜まるために、そのエネルギーを解放することによって起こると考えられている。地震には、グーテンベルク・リヒター則という地震のマグニチュードと発生頻度との関係が知られている。これは、米国の南東部にあるニューマドリッド地震帯におけるデータから導き出されたもので、横軸に地震のマグニチュード、縦軸に頻度の対数値をグラフ上にプロットすると、直線になるというものである。この直線の傾向が正しいとするなら、東日本大震災のようなマグニチュード9.0クラスの地震は、マイナス4.8くらいでおよそ6万年の1回程度という予測が可能にあり、必ずしも想定外とは整理できないこととなる。