企業に対する社会的価値観は大きく変化しようとしている。これに伴い、企業と社会との関係性の見直しと企業の存在意義の再考が進められている。SDGsが提示する社会・環境問題は、現代社会が享受している生活基盤を将来の世代へ継承するために解決していかなければならない喫緊の課題といえる。
これまでの経済活動や企業活動の弊害が今日の社会・環境問題を生んでいるとの認識から、既存の枠組みの修正論議も各国で進んでいる。効率性重視による極端な短期的なフロー利益の追求の歪みが指摘され、中長期的視点に立ち好ましい社会的発展と企業活動を同期させるための対応策の検討が進められようとしている。
振り返ってみると、この問題は企業の経営課題に常に浮上してくる本質的選択の問題に繋がっており、その意味で古くて新しい問題である。例えば、企業業績における短期重視 v. 中長期重視、足元の収益の拡大 v. 将来の企業価値拡大、財務資本中心の経営 v. 多様な資本を考慮した経営など、経営にとって、トレードオフをいかにバランスさせてゆくかにつながる。企業が短期的な経済的価値の向上に極端に偏った活動を続けた結果が、今日の社会・環境問題の原因になっていると考えられる。この点を意識して、経営変革の視点を整理したのが図表-1である。
社会や企業のサステナビリティ(持続可能性)は、環境、社会、経済の諸要素が相互に関連し合いながら長期的に持続可能な状態につながることとなる。既存の枠組みの持つ課題を洗い出し、その要因への対応策を検討しなければならない。企業には、持続可能な社会と企業の持続的成長を両立させるための柔軟な思考と経営変革が求められている。このようなスタンスで実践する経営を「サステナブル経営」と呼んでいる。
企業は、これまで市場メカニズムに組み込まれた財務要素を中心に経営を行ってきた。しかし今後は、社会課題の解決に関わる非財務要素を考慮の対象にし、中長期的視点で社会と企業の持続的発展を両立させなければならない。これは、経営にとっては、財務要素に加え非財務要素を経営管理に実装し、短期的成果と中長期的成果をバランスさせ、企業の持続的成長と社会課題の解決、持続的発展を同期づける活動に腐心することを意味する。ただ、これまで経験の少なかった領域であることは間違いなく、不確実性の高い領域への対応となる。当然、持続的発展を可能にする戦略策定とレジリエンスを強化するリスク管理の具体策を模索してゆく時代に突入したことを意味する。
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