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自然保全と社会の発展の両立の関係は単純ではない。人口増加によって、人の居住地域を拡大したり、食糧の確保のために農業や狩猟の生産量の増大が必要となる。そのため社会の境界は拡大し、動植物の生存地域と重なってゆく。この結果、自然の破壊や生態系への攪乱や生息生物の喪失の危機の可能性が起きる。また、この自然と社会との境界が曖昧になってゆくと獣害も発生し、野生動物の保護と獣害からの防衛といったトレードオフを深刻化させる。

森林利用を例にとり、これまでの歴史を振り返ると、かつての日本の都市化、工業化を前提とした急速な経済発展は、過疎、農山村地域の高齢化や林業の低迷といった結果をもたらした。土地所有者、生活者のみでは、もはや地域の再生や森林の適切な整備を担いきれない状況が生じている。地域社会の発展と資源再生を成り立たせる枠組みの構築には、新たな森林利用を志向する外部者の価値と、従来から森林と向き合ってきた土地利用者、生活者の価値を、地域の中での共存共栄させることが必要となる。単純な、ある/なし、やる/やらないといった二項的選択で解決できない複雑な構造が生まれる。

社会生態システムは、社会的要素と生態学的要素が不可分に入り混じり作用し合い、絶えず変化し続けている。時間、空間、規模の異なる複数のシステムと多くの構成要素が関係しながら適応進化していく複雑適応システムの特徴を持つ。このような社会生態システムの中でいかなる企業活動を展開すべきなのであろうか。今後企業は、これらのリスク要因と企業活動のあり様を整理していく必要があろう。図表-1は、気候変動リスク、生物多様性リスクをとりあげ企業活動との関係を整理したものである。