【ワシントン、イスタンブール、カイロ時事】トランプ米大統領は米東部時間21日、イスラエルと交戦するイランを攻撃したと発表した。攻撃が行われたのはイラン時間の22日未明で、中部フォルドゥなどにある3カ所の核施設が標的となった。イランは攻撃後も核開発継続の意向を示し、中東地域の米軍基地などに報復攻撃を行う構えだ。イスラエルの対イラン先制攻撃に端を発した中東情勢は、一段と緊迫の度合いを増している。

 トランプ氏は攻撃後ホワイトハウスで演説し、「イランの主要な核濃縮施設は完全に破壊された」と強調し、イランに和平協議に応じるよう要求。SNSでは「大きな成功を収めた」と述べる一方、米国が報復攻撃を受ければ「強大な力で迎え撃つ」と投稿した。

 ヘグセス米国防長官は22日の記者会見で、空爆は最高指導者ハメネイ師が君臨するイランの現体制の転覆を目指してはいないと明言した。バンス米副大統領はNBCテレビで「われわれはイランと戦争していない。イランの核計画と戦争している」と主張した。

 攻撃対象はフォルドゥのほか、中部ナタンズ、イスファハンにあるウラン濃縮関連施設。地中深くにあるフォルドゥとナタンズの2施設への攻撃では、B2戦略爆撃機が地下貫通型爆弾「バンカーバスター」を計14発投下した。イスファハンの施設には、潜水艦から巡航ミサイル「トマホーク」が撃ち込まれた。

 国防総省によると、攻撃は数カ月前から準備され、米東部時間21日午後6時40分(日本時間22日午前7時40分)ごろから約25分間にわたって実行に移されたという。攻撃後も現地一帯での放射線量は増えていないとみられる。

 イランのアラグチ外相は訪問先のトルコで、米国の攻撃は国際法に反すると非難し、国益を守るため全ての選択肢を排除しないと表明。米国との交渉については「攻撃され、今は外交の時ではない」と語った。ロイター通信によると、国営テレビは「この地域の全ての米市民・軍が標的となった」との見解を伝えた。

 米国は従来、対イラン直接参戦に慎重だった。しかし、トランプ氏は18日、核開発を放棄しないイランへの「忍耐は切れた」として参戦の可能性を示唆。19日には攻撃について「2週間以内に決断を下す」と述べ、外交交渉の余地を残す考えも示していた。 

イランのウラン関連施設
米軍の地下貫通型爆弾「バンカーバスター」の模型=2007年12月、ミズーリ州ホワイトマン空軍基地(米軍提供)(AFP時事)

 

 ◇米イラン関係を巡る動き

1953年   米支援のクーデターでイランのモサデク首相失脚、パーレビ国王が実権

  79年   イラン・イスラム革命で王制崩壊

        テヘランの米大使館で人質事件発生

  80年   人質救出作戦失敗。米、イランと断交

2002年   ブッシュ米大統領、イランをイラク、北朝鮮と並ぶ「悪の枢軸」と非難

        イラン中部ナタンズの施設でのウラン濃縮疑惑が浮上

  15年   イランと米英仏独ロ中6カ国による核合意成立

  16年   国連や米国、欧州連合(EU)の対イラン制裁解除

  18年   トランプ米政権(1期目)が核合意離脱。米国の対イラン制裁再発動

  19年   イラン、核合意の一部履行停止を表明

  20年   米、イラン革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官を殺害

  25年1月 第2次トランプ政権発足

     4月 米・イラン高官協議開始

     6月 イスラエルがイランの核施設などに先制攻撃

        米軍がイラン核施設攻撃

 

 ◇イラン攻撃を巡る米国の動き

6月12日 トランプ米大統領、イスラエルに攻撃自制を要求

  13日 イスラエル、イランの核施設などに先制攻撃

      イラン、イスラエルにミサイルで報復。米が迎撃を支援

      トランプ氏、イランに核合意に応じるよう迫る

  14日 15日に予定されていた米イランの核協議中止

  15日 イスラエル、イラン全土に攻撃拡大

  16日 G7、イスラエルの自衛権支持の共同声明。トランプ氏は中東情勢への対応で途中帰国

  17日 トランプ氏、SNSでイランに「無条件降伏」要求。最高指導者ハメネイ師を「今は殺害しない」と述べる一方、「我慢は限界」と警告

  18日 トランプ氏、「忍耐は切れた」と発言

  19日 トランプ氏、イラン攻撃を「2週間以内」に判断する方針表明

  20日 イラン外相が英仏独外相らと会談。米国との協議再開に否定的姿勢

  21日 トランプ氏、イランの核施設攻撃を発表

(了)

(ニュース提供:時事通信 2025/06/22-22:59)

(ニュース提供元:時事通信社)