2025/07/02
防災・危機管理ニュース
能登半島地震で石川県の奥能登4市町が4月以降に行った災害復旧工事の入札のうち、25%で入札が成立しなかったことが分かった。背景に業者の技術者不足があり、応札ゼロのケースも目立つ。地震から1日で1年半を迎え、復興への影響が懸念されている。
各市町によると、今年度入札不調となったのは輪島市の入札16件中6件、珠洲市の21件中8件、能登町の39件中9件。穴水町は16件すべてで成立し、不調はなかった。4市町の不調件数の割合は、昨年度の13%を上回る。
珠洲市によると、入札が成立しないことは地震前はほとんどなかったが、最近は慢性化。ある保育園の復旧工事では昨年11月以降、4回の入札を経ても施工業者が決まらず、施設再開のめどが立たないという。
要因について、市の担当者は「少ない業者数の中で発注件数がどんどん増え、業者の施工能力が追い付いていない」と説明。珠洲建設業協会の明星加守暢会長も「地震後は従業員が減った。今年度からは県の復旧工事も増え、技術者不足はどうしようもない状況だ」と語る。
珠洲市では今後、入札による復旧工事が本格化する見通し。市の幹部は「復旧が遅れると復興がおのずと遅れる。復興が遅れれば若い人を中心に人口減少につながる」と懸念する。
建設業界に詳しいクラフトバンク総研の高木健次所長は「全国的に事務職や現場監督が増える一方、重機を動かす技術者や職人が減っている」と指摘。人材不足は自治体の側にも当てはまるといい、「資材価格が上がる中、業者も赤字リスクのある事業には手を出せない。適正価格の設定などで発注者自身も問われている」と話している。
〔写真説明〕穴水町発注の道路災害復旧工事=6月25日、石川県同町
(ニュース提供元:時事通信社)

防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
「自分の安全は自分で」企業に寄り添いサポート
海外赴任者・出張者のインシデントに一企業が単独で対応するのは簡単ではありません。昨今、世界中のネットワークを使って一連の対応を援助するアシスタンスサービスのニーズが急上昇しています。ヨーロッパ・アシスタンス・ジャパンの森紀俊社長に、最近のニーズ変化と今後の展開を聞きました。
2025/08/16
-
白山のBCPが企業成長を導く
2024年1月1日に発生した能登半島地震で震度7を観測した石川県志賀町にある株式会社白山の石川工場は、深刻な被害を受けながらも、3カ月で完全復旧を実現した。迅速な対応を支えたのは、人を中心に据える「ヒト・セントリック経営」と、現場に委ねられた判断力、そして、地元建設会社との信頼関係の積み重ねだった。同社は現在、埼玉に新たな工場を建設するなどBCPと経営効率化のさらなる一体化に取り組みはじめている。
2025/08/11
-
三協立山が挑む 競争力を固守するためのBCP
2024年元日に発生した能登半島地震で被災した三協立山株式会社。同社は富山県内に多数の生産拠点を集中させる一方、販売網は全国に広がっており、製品の供給遅れは取引先との信頼関係に影響しかねない構造にあった。震災の経験を通じて、同社では、復旧のスピードと、技術者の必要性を認識。現在、被災時の目標復旧時間の目安を1カ月と設定するとともに、取引先が被災しても、即座に必要な技術者を派遣できる体制づくりを進めている。
2025/08/11
-
アイシン軽金属が能登半島地震で得た教訓と、グループ全体への実装プロセス
2024年1月1日に発生した能登半島地震で、震度5強の揺れに見舞われた自動車用アルミ部品メーカー・アイシン軽金属(富山県射水市)。同社は、大手自動車部品メーカーである「アイシングループ」の一員として、これまでグループ全体で培ってきた震災経験と教訓を災害対策に生かし、防災・事業継続の両面で体制強化を進めてきた。能登半島地震の被災を経て、現在、同社はどのような新たな取り組みを展開しているのか――。
2025/08/11
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/05
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/08/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方