滞在か退避か 災害は待ったなし‼
2重想定で取り組む防災

危機管理塾 8月5日

押入れ産業株式会社 総務部 兼 営業統括本部 文書保管事業部
運営チーム係長 木戸博美氏

危機管理塾をリアル開催。押入れ産業の木戸博美氏がBCPマニュアル策定までの道のりを発表

情報収集で本気スイッチ できることから改善

危機管理塾は8月5日、東京・千代田区の朝日ビル会議室で開催。トランクルームレンタルのFC事業を展開する押入れ産業の木戸博美氏が、BCP担当に任命されてからマニュアルを策定するまでの経緯を発表した。

同社では過去にもBCP策定が試みられたが、人材の不足などから中断。それが2023年に再び立ち上がり、総務に異動したばかりの木戸氏が担当になった。経験がなかったため、まず情報収集から。ポイントとなったのは、建物からの「退避」を想定することだったという。

「大規模地震では、いわゆる新耐震でも倒壊のおそれがある。そのため滞在だけでなく、退避の選択肢も用意したいと考えた。しかし退避を想定したBCPは他社の例に見当たらず、何から手をつけていいかわからなかった」と木戸氏。書籍の読み込みやセミナー参加、東京都の防災サイトからの資料収集から行動を開始したとする。

その過程で、例えば家庭防災のガイドなど、社員に役立ちそうな資料をそのつど共有。また阪神・淡路大震災の動画や災害時の安全配慮義務にかかる裁判例などから知識を得ると「本気スイッチが入った」とし、特に各地の防災イベントでは「防災の知恵を吸収できた」と話した。

基礎知識を身につけると、首都直下地震における自社の被害想定と東京都帰宅困難者対策条例をふまえてBCPの基本方針を設定。マニュアル策定までのスケジュールを固め、社員研修会で共有した。同時に社内の具体的な改善活動にも着手。3日間の宿泊を前提に、備蓄品の補充や可視化、管理体制の充実、社員用防災リュックの手配などを進めた。

関係機関と連携した自主防災訓練、救命講習、応急処置訓練、退避場所まで実際に歩く簡略地震訓練なども複数回開催。「それぞれ全員参加を目指し、なるべく回数を多くした。うれしかったのは、社長が声をあげて参加を促してくれたこと。救命講習のあとにはAEDも設置してくれた。トップのやる気がすごく大事だと実感した」

BCPマニュアルは、プロジェクト立ち上げから10カ月後に完成。滞在と退避の2重想定が特色となり、東京都の事業所防災リーダー優良企業に認定された。「『退避』を考えている会社には参考にはなると思う。今後は初動訓練でマニュアルの実効性を確認したい」と語った。

参加者の声

 

・BCPマニュアル作成までの道のりのお話が、参考になりました。
 

・わかりやすいマニュアル、備蓄管理がまだまだ当社でもできていないので、参考にさせていただきます。
 

・備品管理や社員共有、情報収集など、帰宅抑制以外も自社の参考になるヒントが多くありました。
 

・一から情報収集して努力している姿勢がすばらしいと感じました。


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