イメージ(写真:新華社/アフロ)

北海道の南東部、日高山脈の東側に位置する十勝(とかち)地方は、農業王国として知られる。畑作農業が盛んで、じゃがいも、ビート(甜菜)、豆類、トウモロコシ、小麦などを産するわが国有数の農業地帯である。酪農や畜産業も盛んだ。この地域の食料自給率は1170パーセントに達する。つまり、この地域は、この地域で消費する分の10倍以上もの食料を生産し、他地域に供給している。わが国最大の食料基地と言っても過言ではない。

冬の十勝地方の天気を表す言葉に「十勝晴れ」がある。冬型の気圧配置になると、十勝地方は冬晴れとなり、日差しに恵まれる。これは、本州の太平洋側の冬の気象と共通する。ただし、十勝地方の場合は極寒(ごくかん)の晴天である。そんな十勝地方にも、時に大雪が降る。それも、並大抵の大雪ではない。

昨年(2025年)の2月3日から4日にかけて、十勝地方はとんでもない大雪に見舞われた。十勝地方の中心都市帯広では、3日17時に5センチメートルだった積雪深が、翌日(4日)の朝9時には129センチメートルになった。16時間に124センチメートルの増加である。この大雪により、道路の不通、鉄道の運休、航空便の欠航、建物の倒壊などが発生し、地域社会の活動が大きな障害を受けた。帯広市内の路線バスは2月4日から6日までの3日間にわたり全面運休となり、その後も影響が長引いて、通常運行に戻ったのは2月21日である。小・中・高校は3日間の休校を余儀なくされた(高校は3日目に一部再開)。今回は、十勝地方を襲うこの種の大雪現象について調べてみる。

1時間に24センチメートル

図1に、帯広における2025年2月3日から4日にかけての気象経過を示す。図の上部に風向・風速を赤矢印で記入した。矢の長さを風速に比例させている。3日未明から朝にかけて、毎秒1メートル程度の弱い南寄りの風または西風が吹いていた。明け方は晴れており、気温(橙色の折れ線グラフ)が摂氏マイナス10度近くまで下がったが、この日の最低気温の平年値が摂氏マイナス13.4度だから、帯広としては暖かい朝である。朝から雲に覆われ始め、8時台にごく弱い雪が降ったが、積雪深(青色の折れ線グラフ)に変化はなかった。午前中に気温が急上昇し、日中は摂氏マイナス1度近くになった。風が強まることはなく、毎秒2メートル以下の南寄りの風で推移した。日差しはほとんどなかった。

画像を拡大 図1. 帯広における気象経過(2025年2月3日~4日)

14時35分に雪が降り始めたが、初めは止み間のある断続降雪であった。3日15時26分、帯広測候所は、帯広市を含む十勝地方全域に大雪注意報を発表した。雪が本格的に降り出したのは16時10分で、以後は視程(見通せる水平距離)が3キロメートル未満となり、積雪深が増え始めた。19時過ぎからは、視程が1キロメートル未満の強い雪となった。20時22分、帯広測候所は、大雪注意報を大雪警報に切り替えた。ただし、この時点での予想降雪量は、「多いところで60センチメートル」というものであった。その後は視程がしばしば500メートル未満となり、毎秒2~3メートルで強くはないが北西の風が卓越するようになった。気温は摂氏マイナス2度台を維持した。

3日夜遅くからは降雪強度が一段と強まり、図1に赤色の棒グラフで示すように、1時間降雪量が10センチメートルを超えるようになった。4日2時過ぎには、緑色の折れ線グラフ(警報・注意報の基準要素である12時間降雪の深さ)で示すように、降雪の深さの合計が早くも60センチメートルを超え、大雪警報で予告された降雪量をあっさりと上回った。3時までの1時間には、積雪深がなんと24センチメートル増加した。大雪の時には、積雪層が自重によって沈み込みながら積もっていくから、実際に降った降雪量はこれより多いはずである。2時から4時にかけては、視程がしばしば100メートルを下回り、いわゆるホワイトアウトに近い状態となった。この期間中の風は毎秒3メートル程度の北西風で、瞬間風速でも毎秒5メートル程度しかなく、吹雪の状態ではなかった。弱風下での1時間に24センチメートルの降雪は、「しんしんと」というより、「どさどさと」降り積もる、という形容が当てはまる。