2026/07/27
危機管理の伴走者たち
トップインタビュー
森総合研究所 代表兼首席コンサルタント 森健 氏
組織レジリエンスの強化やサイバーセキュリティーの向上、サプライチェーンの強靭化など、危機管理やリスク管理担当者が関与する領域は年々拡大している。変化する社会状況にあわせ、担当者はどのように学び、備え、対応することが求められるのか。森総合研究所代表の森健さんは、自治体と企業で危機管理担当者としての経験を積み、現在はコンサルタントとして、企業や団体の危機管理の支援を手がけている。自身の経験を踏まえ、危機管理の担当者にどうアドバイスしているのか、話を聞いた。
※本記事は「月刊BCPリーダーズvol.76(2026年7月号)」に掲載されたものです。
Profile
森健【もり・たけし】
1966 年生まれ、東京都出身。開成高校、慶応義塾大学を卒業後、1994 年に静岡県下田市役所に入庁。静岡県庁防災局(現:危機管理部)への出向を含め、約12 年間地方自治体で活躍。その後、2007 年に住友電装でリスク管理や危機管理業務を経験。2011 年、他社でコンプライアンスやリスクマネジメント、CSR の責任者を務める。2015 年に独立、森総合研究所の首席コンサルタントとして活動を開始。
―なぜ、危機管理分野のコンサルタントとして、活動し始めたのでしょうか?
自治体や企業の危機管理を支援する立場になったきっかけは、2003年に静岡県庁で防災担当として勤務していたとき、同僚に佐々淳行先生の著書を薦められ「危機管理の仕事は面白い」と感じました。当時は公務員だったので、ずっと同じ部署にいるわけにもいきませんし、希望通りの部署に行けるとも限りません。それでも、いつかライフワークにすることを夢見ていました。
経歴としては、大学卒業後に静岡県下田市役所に入庁しました。税務課に配属された後は建設課や総務課をへて、静岡県庁に出向し防災担当を務めることに。初めて危機管理に触れました。市役所に戻ったあとも、引き続き防災にも関わり、災害対策本部の事務局も担当しました。
2007年ごろに住友電装という自動車部品のグローバルメーカーに転職します。下田市役所・静岡県庁での危機管理の仕事を評価され、グローバルなリスク管理体制を構築するための危機管理担当者として配属されました。当時、2009年ごろにパンデミックが流行することも想定し、危機管理体制を整えました。パンデミックは、一定の周期(最長40年)で繰り返されており、1969年の香港インフルエンザから40年経ったので、再来するのではと考えたからです。リーマンショックの最中で、予算確保は難しい状況でしたが、海外拠点の備蓄と教育、各国版のマニュアルを整備しました。そして対策完了直後に実際に新型インフルエンザが世界的に流行し、無事に対応できました。
その後、転職した外資系の会社で上場に関する法務責任者を経験し、その後2015年7月に森総合研究所を創業しました。おかげさまで12年目を迎え、官民両方で危機管理やリスクマネジメント分野を支援する仕事に就いています。
地域社会の変化を想定したBCP
――官民で危機管理に携わった経験から、BCPに違いはありますか?
BCPの本質は準備であり、自治体も企業もやるべきことは変わりません。ただし、企業は、自社を中心にBCPを策定しますが、自治体は地域防災計画とBCPの双方を策定しています。ぜひ、企業の危機管理担当者には、地方自治体向けの「大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手引き(内閣府)」を読むことをおすすめします。災害が発生したときに、地域社会がどう変化するかをイメージしやすくなります。また、政府や自治体の具体的な対応をインプットしておくこともできます。
例えば、静岡県の地域防災計画は、地震や津波、火山噴火、風水害などの災害ごとに、シナリオ型でまとめてあります。これらを学ぶことは、企業のBCPを考えるうえでも思考の起点になります。特に被害想定の箇所などを見ていただくと、生かせるヒントがたくさんあるでしょう。
――なぜ企業のBCPで、地域社会まで考慮する必要があるのでしょうか?
工場の防災を考えるとき、工場の中ばかりに焦点が向きがちです。しかし、周囲の地形や河川との位置関係、地域全体の集落の配置に目を配り、災害時に地域社会がどう変化するかを加味しないと、実効性のある計画にはなりません。企業の設備や社員が無事でも、地域社会が物流網を含めて機能しない場合もあるでしょう。水害対策で工場をかさ上げしたとしても、そこが水の中に浮かぶ孤立した拠点になっても困ります。周囲の状況変化は、BCPを考えるうえで重要な要素です。
▼POINT
BCP の本質は準備。政府や自治体の具体的な対応をインプットすることで、具体的な計画を考えられるようになる。
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