七夕豪雨――7月の気象災害――
静岡に508ミリをもたらした7時間
永澤 義嗣
1952年札幌市生まれ。1975年気象大学校卒業。網走地方気象台を皮切りに、札幌管区気象台、気象庁予報部、気象研究所などで勤務。気象庁予報第一班長、札幌管区気象台予報課長、気象庁防災気象官、気象庁主任予報官、旭川地方気象台長、高松地方気象台長などを歴任。2012年気象庁を定年退職。気象予報士(登録番号第296号)。著書に「気象予報と防災―予報官の道」(中公新書2018年)など多数。
2026/07/27
気象予報の観点から見た防災のポイント
永澤 義嗣
1952年札幌市生まれ。1975年気象大学校卒業。網走地方気象台を皮切りに、札幌管区気象台、気象庁予報部、気象研究所などで勤務。気象庁予報第一班長、札幌管区気象台予報課長、気象庁防災気象官、気象庁主任予報官、旭川地方気象台長、高松地方気象台長などを歴任。2012年気象庁を定年退職。気象予報士(登録番号第296号)。著書に「気象予報と防災―予報官の道」(中公新書2018年)など多数。
1974(昭和49)年7月7日は、参議院議員選挙の投票日であった。夜、テレビで開票速報が放映されている頃、静岡市付近で雨が強まってきた。その降り方は尋常でなく、「大雨」などという言葉で片付くような生易しいものではなかった。清水市(現在の静岡市清水区)では市街地を流れる巴(ともえ)川が氾濫して市の中心部一帯が広く水につかり、静岡市中心部の安倍川流域でも浸水被害や土砂災害が多発した。両市における被害は、死者27名、全壊・流失・浸水家屋2万6156棟、浸水面積2584ヘクタールに達した。この豪雨は、7月7日の夜に発生したことから、「七夕(たなばた)豪雨」と呼ばれる。ただし、これは気象庁が定めた名称ではなく、通称である。本稿では、気象予報の観点から、この豪雨を検証してみる。
図1に、静岡(地方気象台、所在地=静岡市駿河区曲金)における七夕豪雨の降水経過を示す。静岡では、7日の昼前から雨が降り始めたが、夜のはじめ頃までは降り方が弱かった。21時頃から突如として降り方が強まり、22時までの1時間に76ミリメートルの非常に激しい雨となった。その後、降雨強度に多少の変動はあったが、8日の明け方まで数時間にわたって1時間に60ミリメートル前後の降雨が続き、積算降水量がぐんぐん増えた。8日4時までの1時間に再び76ミリメートルの非常に激しい雨が降った後、降雨強度が幾分弱まり、8時までには雨が止んだ。結局、前日からの積算降水量は508ミリメートルに達していた。これは、静岡における24時間降水量の極値(歴代1位の記録)であり、その後52年経過した現在でも破られていない。ちなみに、静岡における24時間降水量の歴代2位は、2022(令和4)年9月23日に記録した416.5ミリメートルであり、1位とは90ミリメートル以上の開きがある。静岡で「七夕豪雨」の際に記録された極値は、今後もそう簡単には破られないのではないか。
24時間降水量の極値に言及したが、図1でみると、静岡における七夕豪雨は、24時間より短い時間で降っている。降り始めから降り止むまでの降雨継続時間は約21時間だが、総降水量(508ミリメートル)の大部分(約87パーセント)は、7日21時から8日4時までの7時間のうちに降ったことが分かる。これが、この豪雨が生易しいものでないゆえんである。24時間降水量で見ても驚異的な記録なのだが、それが7時間に集中したところが尋常でない。
図2に、七夕豪雨による静岡県内の総降水量分布を示す。静岡県内でも降水量には大きな開きがあり、遠州灘に面した海岸部や伊豆半島南部はむしろ少なく、それより北側の、静岡県西部の山沿いから静岡市中心部を経て、駿河湾奥の沿岸部にかけての地域で多かった。
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