2026/05/09
防災・危機管理ニュース
米アラスカ州南東部にあるフィヨルド観光の名所「トレーシーアーム・フィヨルド」で昨年8月、斜面が崩壊して局地的な大津波が起きた。カナダのカルガリー大や米地質調査所(USGS)などの国際研究チームが調査した結果、津波が付近の斜面をさかのぼった遡上高(そじょうこう)は481メートルと、斜面崩壊が原因の津波では観測史上、2番目に高かったことが分かった。
同チームが8日までに米科学誌サイエンスに発表した。フィヨルドは氷河に削られてできた深い谷状の入り江で、氷河が温暖化により解けて大幅に後退し、周辺の斜面下部がむき出しになったため、崩壊したと考えられる。発生した地震波を解析したところ、規模はマグニチュード(M)5.4に相当した。
斜面崩壊の発生時刻は昨年8月10日午前5時26分(現地時間)。夏の観光シーズンは1日に大小約20隻の観光船がフィヨルドを航行するが、早朝だったため津波による人的被害はなかった。研究チームは、北緯50度以上の地域では氷河の後退や永久凍土の融解で大規模な斜面崩壊や津波が起きるリスクが高まっているとして、監視を強めるべきだと訴えている。
津波の遡上高は、津波の高さとして通常発表される海岸付近での高さの数倍以上になる。研究チームによると、1925年以降、斜面崩壊による津波の遡上高が50メートル以上になった例は27回ある。このうち最高はトレーシーアーム・フィヨルドに近いアラスカ州・リツヤ湾で58年に記録された530メートルで、斜面崩壊のきっかけは地震だった。
トレーシーアームは太平洋沿岸から内陸へ「く」の字形に約50キロ、細長く伸びており、水深は最大380メートル。斜面崩壊と大津波は一番奥で発生し、現場の目撃者はいなかった。研究チームは現地調査や地震波の解析、発生前後の衛星観測画像の比較などで全体像を明らかにした。
〔写真説明〕米アラスカ州の「トレーシーアーム・フィヨルド」で2025年8月10日、斜面が崩壊(正面の白い三角形の部分)し、大津波が起きた場所。同13日撮影(米地質調査所提供)
(ニュース提供元:時事通信社)

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