◇成果急ぐトランプ氏
 佐橋亮・東京大東洋文化研究所教授の話 トランプ米大統領は今回の訪中を、昨秋の習近平国家主席との会談で安定させた対中関係の「果実」を摘み取る機会と見ている。11月の中間選挙前に穀物やエネルギー、航空機といった経済分野で大きな成果を得たい考えだ。
 トランプ氏はイランとの戦争に足を取られ、同盟国との関係も悪化。米国内でも政権への批判が高まっている。中国から経済・通商面での利益を獲得することで、逆風を少しでもはね返す材料にしたい。レアアース(希土類)に関しても準備不足なので、最大の供給国である中国との対立を再燃させたくない。
 トランプ氏は会談の成果を大々的にアピールするとみられ、米国の方が多くを得ているように見えるかもしれない。ただ、早期の「利益確定」を狙うトランプ氏と異なり、中国にとって対米外交はいまだ「投資期」だ。
 習政権は最大の焦点である台湾問題に関し、長期的に中国に都合の良い状況に持っていこうとしている。焦っていない。経済面で米国を快くさせ、いずれ米国から台湾への武器売却が滞るといった展開になれば望ましい。
 武器売却に関しては、首脳会談で話し合ったとしても、リスクが高いので表に出ない可能性がある。内容が発表されなくても、何らかの「暗黙の了解」がなされる恐れはある。
 ◇習氏、米中関係の安定優先
 興梠一郎・神田外語大教授(現代中国論)の話 中国の習近平国家主席がトランプ米大統領との会談で最も重視したのは米中関係を安定化させることだ。習氏は国内経済が低迷する中、米国との関係が悪化することを恐れている。イラン情勢などで米国と立場が異なっていても、関係を管理するという意味合いが強かった。
 イラン情勢は中国にとって好ましくない状況だ。米国によるイラン港湾の海上封鎖で安価な原油を調達できなくなった。米国がイラン関連で中国企業に科した制裁も影響が大きい。
 米イランの間に入って戦闘終結に向けて交渉する力は中国にない。中国とイランの関係はそれほど緊密ではない。「頼むから早く終結してくれ」というのが本音だろう。
 台湾問題に関して、中国はトランプ氏に踏み込んだ対応をさせるほどの強力なカードを持っていなかったのではないか。
 米財界の大物が訪中したことは中国にとって好材料だ。対中投資はリスクが高いというイメージの払拭につながることを期待しているだろう。
 習氏はトランプ氏を世界遺産の「天壇公園」に招いた。中華文明の継承者としての立場を誇示する狙いがあったと思われる。
 今後も中国経済が劇的に改善しない限り、中国は米国に対して防戦一方だろう。
 ◇狙いは対立の管理
 呉軍華・日本総研フェローの話 今回の米中首脳会談の最大の狙いは、対立の管理(マネジメント)にある。両国は完全な競争関係にあるが、今は対決する時期ではないと感じている。けんかをしながらも、安定的に関係を深めようとしている。
 両国は経済をはじめ、持ちつ持たれつだ。トランプ米大統領はウォール街やシリコンバレーを象徴する企業のトップを訪中に同行させた。安定した米中関係の恩恵を受けている人々であり、米国が置かれた立場を映し出している。
 米国は自国産大豆などの対中貿易拡大を望む一方、中国側は米国製半導体などを求めており、交換条件(バーター)取引もあり得る。
 人工知能(AI)も大きなテーマだ。AIの安全保障上の重要性は核政策に匹敵し、米中競争の主戦場でもある。使い方次第では、将来の世界情勢にも影響する。
 米国はAIの利用方法や開発範囲について早い段階から取り決めを話し合いたいはずだ。中国側も、規律面で米国に及ばない部分もあり、協議に応じるインセンティブを感じていると思う。
 米国は首脳会談に先立ち、紛争当事者であるイランへの支援を理由として中国の個人や企業に制裁を科した。会談の雰囲気は和やかに見えるが、米中関係は当面の間、緊張感のある状況が続くだろう。 
〔写真説明〕佐橋亮 東京大東洋文化研究所教授(本人提供)
〔写真説明〕興梠一郎 神田外語大教授
〔写真説明〕呉軍華 日本総研フェロー(本人提供)

(ニュース提供元:時事通信社)