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低下する防御

災害によるネットワーク環境も変化も必然です。停電や激しい揺れによるケーブルの断線など、オフィスビルのインフラ障害により、企業は仮設的な通信手段を構築せざるを得なくなります。モバイル回線、臨時VPN、拠点間の直接接続など、通常とは異なる経路が設定されることになります。

その対応として新しく構築したネットワークは往々にしてセキュリティ設計が不十分になります。なぜならファイアウォール設定や認証ポリシーも暫定的になり、平時には厳格に運用されているゼロトラストモデルも例外的に緩和され、私用端末(BYOD)が業務に持ち込まれるケースが増えるからです。私用端末はEDRの対象外となり、検知不能領域を生みます。

新規ネットワークのDNS制御では怪しい通信が見逃されます。危険なドメイン(攻撃者のサーバ)をブロックできず、ログも残りません。

結果として、企業ネットワークは「守られた城」から「開かれた作業現場」へと変質します。攻撃者にとっては、侵入経路が劇的に増える瞬間となります。

復旧の足がかりとなるバックアップからの復元やシステム再稼働にも罠があります。災害直前のバックアップに既にマルウェアが潜伏していた場合、それを復元することで再び感染が拡大する可能性があります。

復旧を優先するあまり、パッチ適用やセキュリティ更新を後回しにするケースも想定され、これにより既知の脆弱性が露出した状態でシステムが稼働し、外部からのスキャンや侵入の対象となることがあります。

さらに、監視体制の弱体化や停止が起こると不正侵入があっても検知が遅れます。つまり、「侵入されたことに気づかないまま復旧が進む」状況が現実に起こりうるわけです。

想定すべき攻撃者は、仮想空間からだけではありません。災害時には外部の応援要員や委託先が増え、通常とは異なる人員構成になることが想定されます。こうした環境では、権限付与の基準が曖昧になり、結果として過剰なアクセス権が与えられがちです。

加えて、「復旧支援」を装った接近も増加します。偽のITベンダー、偽のサポートメール、あるいは急を要する業務を装った指示など、人の判断を狙う攻撃は、混乱時ほど成功率が高まります。災害時に詐欺や偽情報が拡散しやすい背景も、同じ構造に基づいています。