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首都直下地震が発生したときには、企業は当然ながらに、人命を最優先にした救命救護からはじまり、可能な限り迅速に事業継続の活動に進みます。本社機能の停止が起こることは避けられません。その中で対策本部が設置され、BCP(事業継続計画)が発動されます。各社は復旧・事業継続に向けて全力を挙げることになるでしょう。

しかし、この「復旧の最中」にこそ、もう一つの重大なリスクが進行します。それがサイバー攻撃のリスクです。災害時における火事場泥棒的な攻撃は、世界的に見ても決して珍しいことではなく、実際に国家間の紛争などの混乱に乗じたフィッシング詐欺や偽サイトの増加が確認されています。問題は、外部だけではありません。企業自身の運用が変質することで、平時には考えにくい“弱点”が露出してしまいます。

復旧優先が生む「ほころび」

災害時の組織は、「サイバーセキュリティ優先」から「復旧優先」へと軸足を移します。意思決定は迅速化され、通常の承認プロセスは簡略化されることになり、これらは当然の対応だと共通認識され、その結果、ITガバナンスの前提条件が崩れます。

典型的なのが管理者権限の扱いです。復旧作業を急ぐあまり、ローカル管理者権限や特権IDが一時的に広範囲に付与されることになります。複数の担当者が同一アカウントや端末を共有し、パスワードが口頭や手書きのメッセージで伝えられるといった状況も現実に起こりうる。こうなると、「誰が何を行ったか」を後から追跡することはほぼ不可能となります。

さらに、通信障害や端末損傷の影響で、多要素認証(MFA)が機能しないケースも想定されます。その結果、やむを得ず認証を簡略化する措置が取られれば、アカウント乗っ取りのリスクは一気に高まります。このように災害時は心理的にも、サイバーリスクに対する警戒を軽んじ、攻撃者にとっては理想的な侵入環境となるわけです。

このような状況で管理者権限が搾取されると、オンプレミスの環境ばかりでなく、SaaSとしてのMicrosoft 365やGoogle Workspaceなどのコミュニケーション基盤の情報が奪取され、社内および全取引先とのメール、機密データが公開されれば、企業にとって取り返しのつかない状況に陥ります。