サントリーホールディングス(HD)の新浪剛史会長が1日付で辞任した。2014年の社長就任以来、海外を中心にグループの成長をけん引し、今年3月に会長に就いたばかり。薬物疑惑による突然の退場は「青天のへきれき」(鳥井信宏社長)だった。

 「二人三脚でやると言ったのに非常に残念だ」。2日の記者会見で、鳥井社長は涙をにじませた。新浪氏は社長在任中から鳥井氏を後継候補として対外的に発信。鳥井氏も「大胆で決断力のある経営者」と評し、その関係は「兄弟」のようだったとされる。

 新浪氏は14年10月、創業家以外で初めてサントリーHDの社長に就任。ローソン再建の手腕を買われ、当時の佐治信忠会長兼社長に抜てきされた。買収した米蒸留酒大手ビーム(現サントリーグローバルスピリッツ)との統合を進めるとともに海外事業を強化。会長就任後も海外を中心に鳥井氏をサポートする考えを示していた。

 本人が、購入したサプリメントを巡って警察から捜査を受けたと会社に正式に伝えたのは今年8月22日。社内では当初、「まだ捜査の結果が出ていない」として続投を求める幹部も少なくなかったが、28日には取締役全員が辞任に賛成した。佐治氏も鳥井氏に対し、新浪氏を説得するよう促したという。

 鳥井氏は会見で「トップマネジメントとして法令に抵触しないことは当然で、サプリの購入にしかるべき注意を払うことも不可欠の資質」と述べた。今後の捜査の行方は不透明だが、国内有数のオーナー企業として、ガバナンス(企業統治)の在り方も改めて問われることになりそうだ。 (了)

(ニュース提供元:時事通信社)