(イメージ/Adobe Stock)

社内での自撮りや職場風景の画像や映像の公開が、大きなトラブルに発展しています。背景に映り込んだ情報が読み取られ、意図しない情報流出が発生しています。今回は、スマホ時代の情報流出を取り上げます。

■事例:投稿からの情報流出と拡散

ある日の夜ーー。静まり返ったオフィスの片隅で、開発部の若手ホープであるAさんは、パソコンの画面とにらめっこしながら、必死に仕事をこなしていました。来期に発表を控えた極秘プロジェクトの仕様書が、ようやく大詰めを迎えています。連日のハードワークで体は疲れていましたが、社運をかけたプロジェクトに関わっているという充実感が、Aさんの心を突き動かしていました。

「よし、今日のノルマは達成だ」。デスクの上を片付けながら、Aさんは、ふと、この達成感を誰かと共有したくなり、スマホのカメラを起動しました。お気に入りの自身の愛用マグカップと、少し散らかったデスク、そして遠くに見えるオフィスの夜景。

「今日も遅くまで新プロジェクトの準備!チームのみんなで絶対に成功させるぞ!」

そんな熱い意気込みのテキストを添えて、個人のSNSアカウントに写真を投稿したのです。本人は会社の悪口を言ったわけでもなく、ただ自分の頑張りと仕事への情熱をアピールしたつもりでした。

しかし、その投稿がアップされたわずか数分後、事態は誰も予想しなかった方向へと動き始めます。Aさんのフォロワーの中に、株式市場の動向を冷徹に見つめる熱心な個人投資家が紛れ込んでいました。その投資家は、木村さんがアップした写真の「背景」に目を留めたのです。デスクの奥、少しピンボケした状態で写り込んでいたホワイトボード。そこには、まだ世の中に一切公表されていない新商品の具体的なスペックと、発売予定日のタイムラインがびっしりと書き残されていました。

「これは、あの企業の次の一手か?」。ネットに放たれた情報は、またたく間に拡散していきます。投資家たちのコミュニティで「インサイダー情報ではないか」「いや、公式発表前の情報漏洩だ」と騒ぎになり、まとめサイトやSNSであっという間に拡散されていきました。

翌朝、広報部の電話は鳴り止みませんでした。メディアからの事実確認の問い合わせ、主幹事証券会社からの確認、そして提携企業からの「情報管理はどうなっているんだ」という厳しい叱責。

何も知らずに出社したAさんは上司に呼び出され、ことの重大さを知らされて目の前が真っ暗になります。「私はただ、仕事を頑張ろうって言いたかっただけなのに…」と、青ざめた顔で立ち尽くすしかありません。

リスク管理担当のBさんもまた、緊急の対応に追われながら頭を抱えていました。会社としては毎年のように「SNS利用ガイドライン」を配り、コンプライアンス研修も実施してきたはずです。それなのに、悪意のない社員の、たった一枚の写真の投稿によって、企業の社会的信用や市場への信頼が根底から揺らいでしまっています。

ルールを強化すればするほど、現場の「やる気」や、社員個人の「自然な発信」を監視するような空気になってしまいます。かといって、放任すれば次の地雷がどこで爆発するかわかりません。

Bさんはどのようにしていいか悩んでいます。