2026/08/30
防災・危機管理ニュース
28日に半年を迎えた米イランの戦闘。事態収束への道筋が見えないまま、原油輸送の要衝ホルムズ海峡の通航正常化は遠のき、エネルギー供給を中東に依存してきたアジアでは、需給逼迫(ひっぱく)に伴う深刻な影響が続く。燃料不足に悩まされる国がある一方、安全保障上の懸念を踏まえ、ホルムズ海峡経由の原油への依存脱却に向け、新たな選択肢を模索する国も出ている。
◇長引くガソリン不足
今月20日、ミャンマー最大都市ヤンゴンの北東部にあるガソリンスタンドでは、販売していたガソリンの一部が在庫切れとなった。2月末の戦闘開始直後に比べ、給油のために並ぶ車列は短くなったが、今も列ができている。ガソリンスタンドのスタッフは「在庫がいつ回復するか分からない」とため息をついた。
ホルムズ海峡封鎖を受け、各国が自国向けの供給確保を優先する中、シンガポールやマレーシアなどを経由して燃料を調達していたミャンマーへの供給は細った。内戦の影響で国内の流通網は寸断されており、ガソリン不足が早期に解消する見込みはない。
当局側は3月以降、ナンバーによって走行可能な日を分け、自家用車や商用車の使用を制限。ヤンゴンに住むチョースワさん(45)は「娘を学校に送らなければならないのにストレスだ」と語り、不満をあらわにする。
◇痛む家計
燃料調達を隣国インドに頼る内陸国ネパールは、家庭での調理に使う液化石油ガス(LPG)不足が特に深刻だ。地元石油公社は3月以降、買いだめやパニック買いを防ぐため、通常型(14.2キロ)の半分の量が入るガスシリンダーを配るが、全家庭に行き届いていないのが現状だ。
首都カトマンズのIT企業に勤務するスバス・ダルナルさん(31)は「ガスシリンダーが空の状態が1カ月以上続いている」と嘆く。主婦のニタ・ブダトキさん(41)も燃料だけでなく食料品の価格も高騰しており、「食費がほぼ2倍になり、生活が厳しい」とこぼした。
日々の生活を直撃するガソリン価格上昇を心配する声はベトナムでも聞かれる。ハノイ市内をバイクで移動していた主婦グエン・スアン・クインさん(49)は燃料費高騰が商品やサービスの値上げを招いており、「家計に影響している」と不安をのぞかせた。
原油の多くを中東からの輸入に頼っていたベトナムでは、中東情勢が緊迫し、燃料供給への懸念が強まった。政府はガソリンに課される環境保護税率の引き下げや燃料価格安定基金の活用など、一連の対策を実施。燃料価格はやや落ち着きを見せているが、情勢次第で上振れするリスクは残っている。
◇新常態への覚悟
エネルギー危機の早期解消が見込めない中、対策に乗り出す国もある。原油輸入の9割超を中東に依存してきたフィリピンは、ホルムズ海峡封鎖を受け、3月に「国家エネルギー非常事態」を宣言。燃料費高騰などへの対策を進めるとともに、エネルギー安全保障の確保に向け、供給源の多角化に取り組んでいる。
2022年2月のウクライナ侵攻を受け停止していたロシアからの原油調達を再開したほか、日本の支援を得て石油備蓄制度の強化にも着手。マルコス大統領は7月下旬の演説で「原子力によるエネルギー生産を再検討すべき時が来たのかもしれない」と述べ、1980年代にほぼ完成したものの計画が頓挫したルソン島のバターン原子力発電所の活用も視野に入れる考えを示した。
マルコス氏は、南シナ海で領有権争いを続ける中国との石油・ガス共同開発にも意欲を示し、なりふり構わない姿勢を打ち出している。「ホルムズ海峡を通る石油製品の大部分がアジアに届くという旧来の状態に戻ることはない」と語る言葉からは、ニューノーマル(新常態)に臨む覚悟がにじみ出る。(バンコク、マニラ、ハノイ、ニューデリー時事)。
〔写真説明〕給油のためガソリンスタンドに並ぶ車列=7月9日、ミャンマー・ヤンゴン(EPA時事)
〔写真説明〕空になった液化石油ガス(LPG)シリンダーを運ぶ人=5日、ネパール・カトマンズ(EPA時事)
〔写真説明〕バターン原子力発電所の正面ゲート=2022年4月、フィリピン・ルソン島(AFP時事)



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