爆発したイオンモール(写真:新華社/アフロ)

「被災後は建物に戻らない」。熊本地震以降、そのような考え方を当然視する報道や書き込みが数多く見られる。確かに、建物の倒壊などの危険があれば再入場を避けるべきだろう。しかし、ガス爆発という事態をどれだけの人が予見できただろうか。さらに、津波からの避難や事業継続の観点を考えれば、実際の対応はそれほど単純ではない。しかも、再入場を一律に禁止する法令はなく、最終的な判断は施設管理者に委ねられている。熊本地震で発生した爆発事故を教訓として、ガス漏れの確認を含めた再入場判断の在り方について考えてみたい。

ガス爆発後の国・企業の動き

7月28日に発生した熊本の地震では、発生から約1時間半後の午前5時50分ごろ、イオンモール熊本で爆発が発生し、7人が亡くなる痛ましい事故が起きた。避難後に一部のテナント従業員が再入館していたことが判明しており、その経緯や管理体制を巡って検証を求める声が上がっている。

運営会社のイオンをはじめ、一部テナント企業は事故後、経緯説明や謝罪を行う事態となり、イオンでは事故調査委員会を設置し、再入館に至った経緯を調査するとしている。また、アパレル大手の株式会社オンワードホールディングスは2026年8月5日、緊急対策として、従業員に携帯電話や鍵など帰宅に必要な貴重品を平時から携行することを義務付けるとともに、一度避難した後は理由を問わず施設内へ戻らないことを徹底すると発表した。

経済産業省は2026年8月5日、LPガス漏えいに起因する爆発である可能性が高いとの見方を示したが、漏えい箇所や着火原因など詳細は引き続き調査中である。

「戻らない」だけでは済まない現実

「被災後は建物に戻らない」。この原則は否定されるべきものではない。しかし、実務はそれほど単純ではない。

考えてみてほしい。もし今回のような商業施設が津波浸水想定区域にあり、津波避難ビルに指定されていたらどうか。「建物に入るな」と「建物に上がって逃げろ」という、相反する要請が同時に発生する。あるいは事業継続の観点では、「いつまで戻らない状態を続けるのか」という問いに、誰かが答えを出さなければならない。

大規模災害時、消防や行政の専門機関が個々の建物を確認しに来るまでには相当な時間がかかる。まして、「構造被害が見当たらない」今回のイオンモールのような建物について、「ガス漏れが起きているかもしれない」と気付かなかったなら、余震程度でも建物は大丈夫だろうと判断しても仕方がないように思われる。消防などに検査を依頼するにしても、消防も被災地の消火活動に追われているため、さらなる時間を要する。さらに大雨が降っていたら、逆に猛暑で外に入れないほどの炎天下だったら、その判断は極めて難しくなる。