2026/09/02
防災・危機管理ニュース
【カトマンズ時事】ネパールと中国を襲った土石流の発生は、氷河が岩石と一体となって崩落する「岩氷雪崩」が起きた結果との見方が強い。その巨大な破壊力は下流の人々やインフラに甚大な被害をもたらした。専門家は、国境を越えた危険な氷河の監視・警戒システムの構築が必要と訴えている。
中国当局の分析によれば、8月26日にネパール側にある高峰の斜面5200メートル付近の氷河が断裂し、岩を巻き込みながら同1800メートル地点までなだれ落ちた。時速180キロの激流は、山から約22キロ離れたチベット自治区吉隆県の国境検問所に約7分で到達。「住民には避難する時間がほとんどなかった」とした。
ネパール・トリブバン大のランジャン・ダハル准教授(地質工学)も、発生メカニズムについてほぼ同様の見解を示した。米地質調査所(USGS)は、被災地で氷河崩落や土石流によるマグニチュード(M)5.2規模の揺れを観測。それに基づくと「エネルギーはTNT火薬1キロトン分に匹敵する。この地域で今回の被害をもたらすには十分だ」と指摘する。
当初、氷河の崩落により川が一時的にせき止められ、それが決壊した結果との推測もあった。しかしダハル氏によれば、下流に到達する速さを考慮するとその可能性は低いという。
ネパールの下流域には洪水の早期警報システムはあるものの、氷河崩落に起因する土石流や鉄砲水に特化した警報システムはない。そのため衛星による監視や地上でのデータ収集も合わせ、危険な氷河の警戒体制を中国とともに構築する必要がある。ダハル氏は、「(警戒)活動は両国で行うべきであり、どちらか一方だけでは情報が不足する」と強調した。
また、インドやパキスタン、ブータンも含むヒマラヤ地域で今後同様の災害が起きる可能性があるとも危惧した。
災害の背景には、温暖化による氷河の急速な融解があるとみられている。ネパールのシャハ首相はSNSで、「(災害は)気候変動によりヒマラヤ地域に住む私たちが直面するリスクが増大していることを示した」と言及。国際社会に対策強化を訴えている。
〔写真説明〕取材に応じるトリブバン大のランジャン・ダハル准教授=8月31日、カトマンズ
(ニュース提供元:時事通信社)

防災・危機管理ニュースの他の記事
- 米軍、革命防衛隊に報復=イラン側は反撃の動き
- 中ロとの関係誇示=米と対立のイラン―SCO首脳会議
- 「岩氷雪崩」で甚大被害=TNT火薬1キロトン分のエネルギー―中国との警戒体制必要・ネパール専門家
- 死者1060人超=土石流、4500人なお不明―ネパール・中国
- 「一帯一路」プロジェクトに被害=土石流災害、貿易路を直撃―中国
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/09/01
-
-
暗黙知を形式知へ、10年の徹底改善が生きた
熊本市の工務店・新産住拓株式会社(小山英文社長)は、2016年の熊本地震や近年相次ぐ豪雨災害を通じて災害対応を磨き上げてきた。発生当日は、約3割の社員が定休日で社長も不在という条件下にもかかわらず、地震発生から50分で社員の安否確認をおおむね完了し、2時間後にはホームページや顧客専用サイトで被害受付を開始した。
2026/08/24
-
-
-
-
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/08/05







※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方