2018/10/30
防災オヤジーズくま隊長の「知らないとキケンな知識」
注目!地域で使える「スタンドパイプ」
さてこれまで私設消火栓の種別と使い方をまとめてきました。
実は近年、全国の市区町村のあいだで期待されているのが、公設消火栓を使った地域住民やによる初期消火活動です。
公設消火栓は公道に設置され、消防署員・消防団員が消火活動に利用するのが一般的です。ですが、大規模な地震で火災が発生し、消防署員・消防団員が迅速に対応できない場合に、この公設消火栓を使って、地域住民や自主防災組織に初期消火活動を担ってもらうものです。
こうした目的から、多くの市区町村が地域の自主防災組織に対して「スタンドパイプ」や「D級可搬式ポンプ」など専用資機材を配備するようになりました。公設消火栓は1000L/分と高圧ですが、こうした専用資機材を用いて、事前に訓練をきちんとすれば誰でも簡単に使用でき、大規模災害時では恐らく一番役に立つ方法であると思います。
「スタンドパイプ」や「D級可搬ポンプ」の使い方については、積極的に導入を進めている市区町村の公式サイトが参考になります。
■スタンドパイプの取り扱い方法(出典:東京都台東区公式チャンネル、再生は下をクリックしてYouTubeサイトで)
「初期消火」が火災被害を大幅削減できる
早いうちに圧倒的な水量で消火できればほとんどの火災は抑えられます。
火災発生直後の火元の小さいうちに、火元の近くにいる人によって初期消火できることで、火災による被害を大幅に削減することができます。
残念ながら、昨年2017年2月に発生した埼玉県美芳町の物流倉庫大火災(アスクル火災)では、20本以上の消火器で初期消火に失敗して、最後に屋外消火栓(350L/分)での消火を試みましたが、起動ボタンを押していないためわずかな放水量しか出ず、拡大延焼してしました(※詳しくは、入間東部地区消防組合消防本部「埼玉県三芳町倉庫火災活動記録」を参照)。
仮に最初から屋内消火栓、屋外消火栓を正しく操作できていれば1階の端材室のみの火災で消火できたものと推察されます。ボタンを押さないがための被害です。
消火器や消火栓の使用方法・消火方法・2次災害防止などは小学校高学年から授業で必須科目にするべきです。地元消防団が指導すればより地域の結束が高まります。子供が防災に興味を持てば必然的に親も無関心ではなくなります。このようなところに税金を正しく使えば災害対応のコストパフォーマンスは高くなるはずです。
子供の時期から消火設備に慣れておけば悪戯も減るでしょう。一人前の大人が消火栓も使えないなんて「ぼーっと 生きてんじゃねえよ!!」と5歳の子に叱られますよ。
【参考】
「BCPのSOS」
第三者の目線でBCP診断をする「セカンドオピニオンサービス」
http://bcpsos.rescueplus.jp/
(了)
防災オヤジーズくま隊長の「知らないとキケンな知識」の他の記事
- 第7回 相次ぐ建設現場における火災
- 第6回 なぜ戸建住宅火災で死亡するのか
- 第5回 火災による死亡原因のほとんどは「煙」にあった
- 第4回 知ってましたか?消火栓は誰でも使えます!
- 第3回 消火器で火災は消せません!
おすすめ記事
-
カムチャツカ半島と千島海溝地震との関連は?
7月30日にカムチャツカ半島沖で発生した巨大地震は、千島からカムチャツカ半島に伸びる千島海溝の北端域を破壊し、ロシアで最大4 メートル級の津波を生じさせた。同海域では7月20日にもマグニチュード7.4の地震が起きており、短期的に活動が活発化していたと考えられる。東大地震研究所の加藤尚之教授によれば、今回の震源域の歪みはほぼ解放されたため「同じ場所でさらに大きな地震が起きる可能性は低い」が「隣接した地域(未破壊域)では巨大地震の可能性が残る」とする。
2025/08/01
-
巨大地震後に噴火 カムチャツカ半島・クリュチェフスカヤ火山地震と噴火の関係は?専門家に聞く
7月30日に発生した、カムチャツカ半島沖を震源とするマグニチュード8.7の地震は、遠く離れた日本の太平洋沿岸一帯に、広く警報を発令させるほどの津波をもたらした。さらにカムチャツカ半島では地震発生後に、クリュチェフスカヤ火山が噴火した。巨大地震がこの噴火の引き金になったのか。地震と噴火の関係について、火山と地震の観測が専門で、調査のために約20回もカムチャツカ半島に足を運んでいる、北海道大学理学研究科附属地震火山研究観測センター教授の高橋浩晃氏に聞いた。
2025/07/31
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/07/29
-
-
-
「想定外」を乗り越える力コカ・コーラ ボトラーズジャパンが挑む、危機管理の再構築
コカ・コーラ社製品の製造、販売、自動販売機のオペレーションなどを手掛ける、コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社は、2024年の能登半島地震を機に、危機管理体制の再強化に乗り出している。直接的な被害は免れたものの、系列他社の被災や支援要請の集中を通じて、情報伝達や意思決定、業務の優先順位といった多くの課題が顕在化した。同社は今、グローバル基準の危機対応フレーム「IMCR」の再徹底を軸に、全社一丸の再構築に踏み出している。
2025/07/21
-
-
-
-
ランサムウェアの脅威、地域新聞を直撃
地域新聞「長野日報」を発行する長野日報社(長野県諏訪市、村上智仙代表取締役社長)は、2023年12月にランサムウェアに感染した。ウイルスは紙面作成システム用のサーバーとそのネットワークに含まれるパソコンに拡大。当初より「金銭的な取引」には応じず、全面的な復旧まで2カ月を要した。ページを半減するなど特別体制でなんとか新聞の発行は維持できたが、被害額は数千万に上った。
2025/07/10
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方