世界で初めての「危機管理学」。オールハザードに対応する人材を育てる

 

(画像提供:日本大学)

日大危機管理学部では、学祖の遺志も汲み、危機管理を総合的に「法律」を通じて教える。学生が卒業時に取得できる学位は「法学士」だ。日本の災害研究分野は理系学部が中心であるため、全国でも珍しい取り組みだ。学生は2年次から「行政キャリア」と「企業キャリア」に分かれ、さらに「災害マネジメント領域」「パブリックセキュリティ領域」「グローバルセキュリティ領域」「情報セキュリティ領域」の4つの研究領域の中から履修モデルを組み、そのほかに法学系科目、語学のほか企業BCPやボランティア、インターンシップ、企業研究などを学ぶ。ではそれぞれの領域について概要を見てみよう。

まず、「災害マネジメント領域」は自然災害だけでなく原発事故のような人為的災害も含め、自然災害論、災害情報論、復旧・復興論やボランティア論など、災害対応について総合的に研究する。「パブリックセキュリティ領域」は、窃盗、詐欺、暴行やストーカーなどの犯罪・治安対策のほかテロリズムまで、公共の安全を確保するための犯罪捜査や刑事政策、司法制度・行政組織について学ぶ。この分野では警察大学校に次ぐような、レベルの高い教授陣による授業を用意しているという。

「グローバルセキュリティ領域」は、国際安全保障、戦争・紛争・テロのほか、現在問題になっている難民問題や人権問題、環境問題など国際的な協力の取り組みが求められる分野が領域に入る。「情報セキュリティ領域」では情報流出を防ぐための情報管理やサイバーセキュリティのほか、デジタルフォレンジック(電子鑑識)などの高度な技術を教えることも視野に入れている。

企業キャリアで情報セキュリティを研究したり、行政キャリアでパブリックセキュリティを学んだり、組み合わせによって学生の様々な将来の道を選択できるようにした。個別の学科を教える大学は存在するが、これらの領域を全て網羅して教えることができる大学は、世界を見ても類がないという。教授陣も、研究者だけではなく警察庁や防衛省、法務省の出身者など実務経験豊富な人材を揃えている。

「もちろん、4年間で危機管理が全て学べるとは考えていないが、オールハザードに対応するために学生時代に最も学んで欲しいのは「インテリジェンス」だ。グローバル化した昨今では、地球の裏側で起こっていることは近い将来、日本国内でも起こる可能性が高く、いかにそれらを「自分ごと」に出来るかが大事だ。学生時代にその感覚を養ったのちに社会に出て実経験を積むことで、危機管理のプロをめざせるのではないか」(福田氏)