【カイロ時事】イスラエルの激しい空爆にさらされているイラン。イスラエルの後ろ盾である米国のトランプ大統領が16日、首都テヘランから「直ちに退避しなければならない」と警告するなど、ここにきて状況はさらに緊迫している。空路でのイラン出国が不可能となる中、同国に在留する外国人は陸路での脱出を図っている。
 「一夜にして全てが変わった」。大学院入試のためテヘランを訪れていたイラク人女性ルア・サッタールさん(33)は時事通信の電話取材に、辛うじて帰国するまでの経緯を説明した。
 爆撃で進学の望みは吹き飛んだ。10歳の息子を連れてイラクへ帰国しようと、空港に駆け付けたが全便欠航。翌朝、4時間以上待って、ようやくタクシーをつかまえた。国境まで10時間。運賃は約2倍に跳ね上がり、2000ドル(約29万円)近くになった。
 「私たち、死んじゃうの?」。通信アプリで取材に答えたイラク人男性のアリ・ウダイさん(47)は、休暇で訪れていたカスピ海に近いイランのラシュトで、10歳の娘が発した言葉に退避を決意した。開始直後の空爆は遠くに見えたが、翌日には空に閃光(せんこう)が走り、爆発音もとどろいた。レンタカーでイラクをひたすら目指し、脱出を果たした。
 現地からの情報によると、テヘランなどでは避難しようとする車列で長い渋滞ができ、道路は「封鎖」状態。燃料を手に入れるのも容易ではなく、攻撃下での国外退避は困難を極める。
 イラクのメディアは、イランに滞在する約3万人の自国民が帰国を希望し、政府が準備を進めていると報じた。日本政府も在留邦人退避へ検討を開始した。
 ロイター通信はアゼルバイジャン情報筋の話として、これまでにロシアや米国、中国など17カ国の600人以上がイランからアゼルバイジャンに退避したと報じた。同国には51カ国の1200人以上から、避難希望が寄せられているという。
 アゼルバイジャンは新型コロナウイルス禍を理由に、2020年から対イラン国境の検問所を閉じていたが、今回特別に退避を受け入れた。ただ、イスラエルと良好な関係にあるため、地元記者によれば、イラン人の避難は認めていないもようだ。
 一方、中東の衛星テレビ局アルジャジーラは16日、パキスタンがイランとの国境検問所を無期限に閉鎖したと報じた。 
〔写真説明〕イランから母国に戻ったパキスタン人の学生たち=17日、クエッタ(EPA時事)

(ニュース提供元:時事通信社)