権限と権利の限界

テレビで「万引きGメン」と呼ばれる施設巡回警備員の活躍を描いたドラマがありますよね。ドラマでは、警備員が万引き犯を裏の事務所に連れていき、「名前は?」「家族は?」「なぜ万引きしたのか?」といった質問シーンがよくありますが、実際は警備員が尋問などを行うことは禁じられています。これらは任意の同行であり、強制力はありません。とはいえ、万引きした人をそのまま帰すことはできないので、警察官が到着するまで、事務所で待ってもらうということになります。

刑事訴訟法第214条 (現行犯人を逮捕した場合の措置)
検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕した時は、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。

214条に明確に記載されているとおり、現行犯人逮捕の権限は私たち民間人にもありますが、その後の調書取り、身体検査、所持品検査などを行う権限は一切与えられていません。ドラマのような強制力を持っての取調べ類似行為は現実には警備員に許されていません。

警備員は、その業務上、警察官よりも先に危険な(危険そうな)人物と出くわすことはありますが、警察官のように職務質問をする権限はなく、武器を持つ権利もありません。不審者を発見し攻撃されたとしても、自身を守るべき武器を携帯していないため、素手で相手に立ち向かわなければなりません。

現金輸送や貴重品運搬業務に就く警備員は、警戒棒の携帯が認められていますが、相手がナイフや銃を持っていたら警戒棒だけを武器にして無傷でいられるでしょうか? 危険と隣り合わせで私たちの安心と安全を守ってくれている警備員が日本中にいます。