2020/01/22
企業をむしばむリスクとその対策
□対策のポイント:BCPで考えるべきポイント
現在、多くの企業で事業継続計画(BCP)を策定していることと思います。事業継続計画は本来、起こり得るリスクの種類を問わずに策定するものとされていますが、日本では地震を主な対象に策定を進めている企業が多いのが実情です。地震を対象にした場合、地震以外の災害(大雨や暴風・大雪など)の発生時でも一定程度の応用が可能ですが、対象を新型インフルエンザに代表される感染症にした場合には、違ったアプローチが必要になります。想定被害を「地震」をした場合との主な違いは以下のようなものです。
① 被害対象はほぼ「人」に限定される
② 感染症は海外由来のものが多く、国内発生まである程度の準備期間が得られる
③ 感染症は流行期間が長期化する場合がある。従ってBCPも長期間にわたる対策とそれに対応できる準備が必要になる
④ 被害が国内全域(または世界中)に広まることが予想されるため、地理的分散によるリスク低減策が有効にならない場合がある
感染症を対象としたBCPで考えるべきポイントは、業種・業態によって社会機能の維持のために事業の継続を要請される企業と、感染拡大防止のため事業活動の自粛を要請される企業が明確に分かれる点です。特に、不特定多数の人間が集まる場所や機会を提供している企業は、感染拡大防止の観点から、国や自治体が事業活動の自粛を要請する場合が多くなります。さらに、自社がいくら事業を続けようとしても、顧客が圧倒的に減少する(市場縮小)する場合もあります。また、事業を継続する際の効果的な感染防止策を行いにくいといった場合もあるかもしれません(例:「不特定多数との対面業務が必須である」「満員電車やバス等による通勤を避けるための時差出勤や、自家用車等での通勤を許可できない」「在宅勤務が不可能な業態」など)
もし、自社において、①事業内容が社会機能の維持に特段関係なく、②感染症が発生した際には顧客や売上の減少が避けられず、③効果的な感染防止策を取りにくい業態、であるならば、自主的に一時休業する判断も必要になってくるでしょう。その場合、企業の維持・存続のための収入をどのように確保するかの計画を立てておくことがBCPの主な内容になります。休業することなどで法律上の問題が発生しないかどうかをあらかじめ確認することも必要です。 新型インフルエンザの影響により業務を停止した場合、免責となるかどうかについて契約書や約款など確認し、必要に応じて取引先と協議・見直しを行っておく必要もあります。
海外への出張については、発生国への渡航はどうしてもやむを得ない場合を除き、中止すべきです。事例の場合、本日時点での中国への出張は慎重にならなければならないでしょう。また、以下の点などから発生国以外の海外出張も原則中止することが望ましいとされています。
・感染が世界的に拡大するにつれ、航空機等の運航停止により帰国が困難となる可能性があること
・拡大に伴い、感染しても現地で十分な医療を受けられなくなる可能性があること
・帰国しても最大 10 日間停留される可能性があること
今回のテーマ:「外部(ハザード)リスク」「経営者・管理職」
(了)
企業をむしばむリスクとその対策の他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
-
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
-
-
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方