2017/04/11
防災・危機管理ニュース
![](https://risk.ismcdn.jp/mwimgs/a/7/670m/img_a7f16771817e16f5c4fbc767ec508d1074027.jpg)
高知県は4月10日、防災啓発冊子「南海トラフ地震に備えちょき(平成29年3月改訂)」を発行したと発表した。県内全戸およそ35万世帯に4月から順次配布するほか、県のホームページからもダウンロードできる。
改訂版では発災直後の「命を守る」取り組みから、助かった「命をつなぐ」ための備えに加え、復旧や復興に向けて「生活を再建する」までを掲載。住民が災害発災後の各場面で自分が何をしなければいけないかをイメージしやすくした。第1章の「我が家のMy備えちょきを作ろう」では、自分の家の備えや家族の連絡先など、住民自らが書き込める仕様にした。
改正した啓発冊子のもう1つの大きな特徴は、「被災後の生活を立ち上げる」ことに着目した点だ。東日本大震災や熊本地震における被災者の法律相談内容をもとに、り災証明書の発行や災害後の国による支援制度を解説するほか、被災後に起こりやすいトラブルについても例示した。
例えば東日本大震災の石巻市では被災して亡くなった人が多かったため、相続関係の相談が多かった。一方で熊本地震では2回の本震と多数の余震により建物被害の数が多く、不動産貸借関係の相談が多かったという。また、住宅や車などのローンの問題も浮上する。
監修にあたった銀座パートナーズ法律事務所の岡本正弁護士は「災害で命が助かっても、その後には生活再建という重い課題が被災者にのしかかってくる。しかし国による当面の生活資金を給付する「被災者生活再建支援制度」や、ローンの返済ができなくなった場合の「自然災害債務整理ガイドライン」など活用することで、被災者は生活再建に大きく一歩を踏み出すことができる。冊子を通じてあらかじめこれらのことを知っておくことで、災害を「自分ごと」にしてほしい」と話す。
![](https://risk.ismcdn.jp/mwimgs/2/a/670m/img_2a5c0f210b20b1caca388b806430b27516861.jpg)
岡本氏は、東日本大震災後に弁護士が各地で実施した無料法律相談で集まった4万件以上の被災者の声を、日弁連災害対策本部のメンバーとしてデータベース化した経験をもとに「災害復興法学」という新たな分野を開拓した。今回の冊子の改定は、同氏の災害復興法学を活用した「自分ごと防災プログラム」を高知県危機管理部南海トラフ地震対策課が取り込んだ形だ。
埼玉県和光市でも、3月31日に発行した「防災ガイド&ハザードマップ」で「災害時のお金・住まい・契約」について取り上げた。岡本氏は「生活再建のための法律は認知度が低い。冊子を活用した市民への知識の普及と、ほかの自治体への波及が今後の課題」としている。
■ニュースリリースはこちら(高知県)
http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/010201/sonaetyoki-pumphlet.html
■防災ガイド&ハザードマップ、避難所一覧(和光市)
http://www.city.wako.lg.jp/home/kurashi/bousai/bousaitaisaku/sei_2_3_5.html
(了)
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
-
3線モデルで浸透するリスクマネジメントコンプライアンス・ハンドブックで従業員意識も高まる【徹底解説】パーソルグループのERM
「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンとして掲げ、総合人材サービス事業を展開するパーソルグループでは、2020年のグループ経営体制の刷新を契機にリスクマネジメント活動を強化している。ISO31000やCOSO-ERMを参考にしながら、独自にリスクマネジメントの体制を整備。現場の業務執行部門(第1線)、ITや人事など管理部門(第2線)、内部監査部門(第3線)でリスクマネジメントを推進する3線モデルを確立した。実際にリスクマネジメント活動で使っているテンプレートとともに、同社の活動を紹介する。
2024/07/23
-
インシデントの第一報を迅速共有システム化で迷い払拭
変圧器やリアクタなどの電子部品や電子化学材料を製造・販売するタムラ製作所は、インシデントの報告システム「アラームエスカレーション」を整備し、素早い情報の伝達、収集、共有に努めている。2006年、当時社長だった田村直樹氏がリードして動き出した取り組み。CSRの一環でスタートした。
2024/07/23
-
「お困りごと」の傾聴からはじまるサプライヤーBCM支援
ブレーキシステムの開発、製造を手掛けるアドヴィックスは、サプライヤーを訪ね、丁寧に話しを聞くことからはじまる「BCM寄り添い活動」を2022年度から展開している。支援するのは小規模で経営体力が限られるサプライヤー。「本当に意味のある取り組みは何か」を考えながら進めている。
2024/07/22
-
-
危機管理担当者が知っておくべきハラスメントの動向業務上の指導とパワハラの違いを知る
5月17日に厚生労働省から発表された「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、従業員がパワハラやセクハラを受けていると認識した後の勤務先の対応として、パワハラでは約53%、セクハラでは約43%が「特に何もしなかった」と回答。相談された企業の対応に疑問を投げかける結果となった。企業の危機管理担当者も知っておくべきハラスメントのポイントについて、旬報法律事務所の新村響子弁護士に聞いた。
2024/07/18
-
基本解説 Q&A 線状降水帯とは何か?集中豪雨の3分の2を占める日本特有の現象
6月21日、気象庁が今年初の線状降水帯の発生を発表した。短時間で大量の激しい雨を降らせる線状降水帯は、土砂災害発生を経て、被害を甚大化させる。気象庁では今シーズンから、半日前の発生予測のエリアを細分化し、対応を促す。線状降水帯研究の第一人者である気象庁気象研究所の加藤輝之氏に、研究の最前線を聞いた。
2024/07/17
-
-
災害リスクへの対策が後回しになっている円滑なコミュニケーション対策を
目を向けるべきOTリスクは情報セキュリティーのほかにもさまざま。故障や不具合といった往年のリスクへの対策も万全ではない。特に、災害時の素早い復旧に向けた備えなどは後回しになっているという。ガートナージャパン・リサーチ&アドバイザリ部門の山本琢磨氏に、OTの課題を聞いた。
2024/07/16
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方