2020/04/02
企業をむしばむリスクとその対策
□解説:社員教育だけでは再発防止できない
顧客情報をはじめとした機密情報の漏洩は、多くの企業にとって重要なリスクであることから、ほとんどの企業では既に何がしかの対策は行っているはずです。しかしながら情報漏えいは全国で毎日のように発生しています。
以下はSecurity NEXT社のHP内の「個人情報漏洩事件・事故関連記事の一覧」(http://www.security-next.com/category/cat191/cat25)ですが、情報の種類や漏えい件数はさまざまながら、全国で2日と置かずに発生しているのが分かります。
事例企業のように機密情報を持ち歩き、顧客のもとでデータを開示しながら打ち合わせや会議を行うことが必須であるという業態も多いでしょう。その場合の対策として「社員教育の徹底」はもちろん対策の一つではあります。事例の場合「車の中にかばんをそのまま放置しない」ことや「重要情報が入ったUSBの社外持ち出しの禁止」などのルール化によって事故の発生を防ぐことには一定の効果を得られるとは思います。
しかしながら「社員教育の徹底」を対策の柱とするには、社員から以下のような声も上がってこないでしょうか?
「これまでも機密情報の取り扱いの教育はたくさん受けてきた。今回の例はBやCの意識の問題であって、自分たちはちゃんとやっている」
「USBメモリーの紛失はわざとではなく故意だ。うっかり紛失してしまうことを教育で防げるのか?」
「荷物を置きっぱなしにして昼食を取りに車を離れたBは確かに悪い。しかし、盗難に遭うのはBだけの責任なのか。例えば、電車の網棚にかばんを乗せてついうとうとしてしまい、それで盗まれた場合でも、うとうとした者の責任か?」
情報に関する社員教育に全く意味がないとは言いませんが、社員教育だけで再発防止になるでしょうか。BさんやCさんは今後最大限の注意を払って業務を行うかもしれません。しかし、他の人が同じような原因で紛失・盗難に遭うことは二度となくなるでしょうか?
企業をむしばむリスクとその対策の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/12/05
-
競争と協業が同居するサプライチェーンリスクの適切な分配が全体の成長につながる
予期せぬ事態に備えた、サプライチェーン全体のリスクマネジメントが不可欠となっている。深刻な被害を与えるのは、地震や水害のような自然災害に限ったことではない。パンデミックやサイバー攻撃、そして国際政治の緊張もまた、物流の停滞や原材料不足を引き起こし、サプライチェーンに大きく影響する。名古屋市立大学教授の下野由貴氏によれば、協業によるサプライチェーン全体でのリスク分散が、各企業の成長につながるという。サプライチェーンにおけるリスクマネジメントはどうあるべきかを下野氏に聞いた。
2025/12/04
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/12/02
-
-
-
-
-
-
目指すゴールは防災デフォルトの社会
人口減少や少子高齢化で自治体の防災力が減衰、これを補うノウハウや技術に注目が集まっています。が、ソリューションこそ豊富になるも、実装は遅々として進みません。この課題に向き合うべく、NTT 東日本は今年4月、新たに「防災研究所」を設置しました。目指すゴールは防災を標準化した社会です。
2025/11/21
-
サプライチェーン強化による代替戦略への挑戦
包装機材や関連システム機器、プラントなどの製造・販売を手掛けるPACRAFT 株式会社(本社:東京、主要工場:山口県岩国市)は、代替生産などの手法により、災害などの有事の際にも主要事業を継続できる体制を構築している。同社が開発・製造するほとんどの製品はオーダーメイド。同一製品を大量生産する工場とは違い、職人が部品を一から組み立てるという同社事業の特徴を生かし、工場が被災した際には、協力会社に生産を一部移すほか、必要な従業員を代替生産拠点に移して、製造を続けられる体制を構築している。
2025/11/20






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方